本研究は、「ミクロ相分離構造のアクティブ光配向制御」について、さらなるミクロ相分離の再配向メカニズムの解明と高次の動的制御手法を確立することにより、高分子ナノ材料の新たな動的機能を創出することを目的とする。これは、静的テンプレートとしての応用に特化して研究されていたミクロ相分離構造について、高分子の柔らかさ・動きやすさというソフトマターとしての性質を能動的に用いようと着目した、これまでにない試みを持つ研究である。 本年度は、前年度の知見を踏まえ、一方向に回転するアクティブ光配向能を示すポリマーの創出を目指した。新たに重合した、液晶ポリマーの一部ににキラル部位を導入したポリマーは、配向方向を変化させる際、メソゲンは一方向に回転しているが、ミクロ相分離構造は完全には一方向に回転していないことが明らかとなった。これは、一方向に回転する際に生じるひずみを緩和するために、一部が逆回転をするためであると考察した。また、キラル部位の導入量に従って液晶温度範囲が低温側にシフトすることがわかった。これは、室温にて液晶性を示す液晶高分子の開発という、当初計画していなかった研究内容への一助となると期待できる。さらに、これらの実験を通して、再配向メカニズムの解明に関する重要な成果を得られた。 研究の最終年度として、研究をまとめるうえで実験および国内外での対外発表ならびに論文執筆活動を集中して行った。本研究内容および研究遂行中に得られた知見を、投稿中を含む4報にまとめ、そのいずれも筆頭著者として執筆した。関連する研究が盛んに行われているフィンランドのAalto大学とTampere工科大学にて、研究成果に関するセミナーを行った。 以上の研究活動と成果から、当該年度の研究成果は、実験内容ならびにその公開の両面について意義があるといえる。
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