研究課題/領域番号 |
13J08138
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
田口 怜美 東京農工大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC2)
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キーワード | イオン液体 / ナノ相分離 / 液晶 / 極性 |
研究概要 |
概要 疎水性ボスホニウム型イオン液体と親水性アンモニウム型イオン液体を混合し、混合前のイオン液体の物性を保ちながら二種のイオン液体をナノレベルで相分離させることに成功した。 背景および意義 イオン液体は室温で液体の塩であり、難揮発性、難燃性など従来の分子性溶媒と異なる性質を示す。さらに、デザイン性に優れた溶媒であり、アニオンとカチオンの組み合わせを選ぶことで幅広い物性や機能を設計することができる。この性質を巧みに利用することで、疎水性で高極性という両立することが難しい物性を有するイオン液体を作製することで、イオン液体の可能性をさらに広げることができる。しかし、単独のイオン液体ではこのような機能設計は難しい。そこで、2種類のイオン液体がナノスケールで相分離するNano-biphasicイオン液体混合系を構築することで、それぞれのイオン液体が持つ機能や物性を両立させたイオン液体混合系の作製が求められている。 結果と考察 ボスホニウム型zwitterionとlithium bis (trifluoromethanesulfonyl) imideを組み合わせて親水性部位を有する疎水性イオン液体を作製した。このイオン液体と複数のヒドロキシル基を有するアンモニウム型イオン液体とを混合すると、親水部と疎水部がナノ相分離して液晶性を発現することを認めた。得られたナノ相分離ドメインの極性評価を、各ドメインに選択的に溶解する色素を用いて行った。その結果、それぞれのドメインは混合前のイオン液体と同等の極性を有していることが分かった。以上の検討から、ナノ相分離後もそれぞれのイオン液体の物性が保たれていることが示され、混合する前の機能や物性を保ったまま二種類のイオン液体をマクロスケールで均一な溶液にすることに成功した。このようなイオン液体の機能化は従来の例がなく革新的である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
イオン液体の構造をデザインすることで、親水性イオン液体と疎水性イオン液体のマクロスケールでの相分離を抑制し、ナノレベルで相分離を起こすことに成功した。さらに、得られたナノ相分離ドメインの局所的な極性を測定する方法を提案し、二種類のイオン液体がそれぞれの物性を保ちながらナノレベルで相分離したNano-biphasicイオン液体混合系を構築することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
イオン液体ナノドメイン間で形成される非常に広い界面を利用した、反応場や分離場などへ展開が考えられる。通常では溶解性が大きく異なり、同じ溶媒に溶解せず反応が進行しない基質や触媒の組み合わせにおいて、Nano-biphasicイオン液体混合系中で反応が進行するか検討する価値が高い。
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