研究概要 |
本研究は, η'中間子と炭素原子核の束縛状態(η'中間子原子核)を探索する分光実験を行うことを目的としている. この実験では, GSI研究所のSIS加速器から取り出される陽子ビームを炭素標的に入射して, 陽子+炭素→重陽子+η'中間子原子核という反応により出てくる重陽子の運動量を, スペクトロメータを用いて測定する。そして, 反応での欠損質量を求めることで, η'中間子原子核のエネルギースペクトルを調べることを計画している。 2013年度は, この実験に向けた準備段階として, スペクトロメータ下流での粒子の飛跡測定を行うマルチワイヤードリフトチェンバー, シグナルの重陽子とバックグラウンドの陽子の識別を行うエアロジェル・チェレンコフ検出器の開発, データ収集システムの準備を行った。そして, これらを総合的にテストするために, FZJ研究所のCOSY加速器の陽子ビームを用いてテスト実験を実施し, 各々が本実験に必要な性能を満たして動作することを確認した。また、スペクトロメータとして用いるフラグメントセパレーターのイオン光学系に関して, 通常の光学系よりも広い運動量アクセプタンスを持つ光学系をシミュレーションにより設計した。 以上のように, 実験に必要な各要素の開発を行い, η'中間子原子核分光実験を実施するための準備がほぼ整った。2014年度には, GSI研究所のSIS加速器を利用して本実験を行える見込みであり, 陽子ビームを用いてη'中間子原子核を探索する初めての分光実験データを取得できると期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2013年度に, η'中間子原子核分光実験のために必要な全ての検出器とデータ収集システムのテストを行い, 本実験に必要な性能を満たして動作することを確認できた。このように, 本実験に向けた準備は順調に進んでいる。また, GSI研究所にて加速器からの陽子ビームを用いて行うη'中間子原子核分光実験は, 2014年度に実施できる見込みであるため, 当初の計画通りにおおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は, 最初に, スベクトロメータとして用いるGSI研究所FRSのイオン光学系のテストを実施する。加速器からのイオンビームをFRSに入射して光学系の特性を実際に測定し, η'中間子原子核分光実験において使用する光学系を決定する。そして, 2014年度中に, GSI研究所のSIS加速器から供給される陽子ビームを用いて, η'中間子原子核分光実験を実施し, 取得したデータの解析を行う。
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