研究課題/領域番号 |
13J08163
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
栗山 翔吾 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 窒素固定 / モリブデン / フェロセン / 窒素錯体 |
研究概要 |
常温・常圧での窒素固定法の開発に向けた研究が盛んに行われているが、遷移金属錯体を用いた窒素分子からの直接的な触媒的アンモニア生成反応の例は限られている。最近私が所属する研究室において、PNP配位子を持つ二核モリブデン窒素錯体を用いた触媒的アンモニア生成反応の開発に成功した。この窒素分子からアンモニアへの変換過程では中心金属の酸化還元を伴うことから、配位子に酸化還元活性部位を導入した場合の影響に興味がもたれる。そこで私は可逆な1電子酸化を起こすフェロセンに着目し、昨年度までにPNP配位子にフェロセンを組み込んだ窒素錯体の合成に成功し、大幅に触媒活性が向上することを見出した。このような結果を踏まえて、今年度はフェロセン部位の構造を修飾することでフェロセンの役割について知見を得てさらなる触媒活性の向上に取り組んだ。はじめに、フェロセンの鉄原子とモリブデン原子との相互作用が触媒活性に与える影響を調べるために、PNP配位子とフェロセンをエチレン鎖、フェニレン鎖で架橋させた窒素錯体についてその触媒活性の検討を行った。その結果、架橋部位の導入によって鉄とモリブデン間の相互作用が弱くなるとフェロセンを導入した効果が発現しなくなることを見出した。続いて、メタロセン部位の還元力が与える影響を調べるため、還元力の強いペンタメチルフェロセンと還元力の弱いルテノセンを導入した窒素錯体について検討した。その結果、中程度の還元力を有するフェロセンを有する錯体が最も効果的な触媒として働くことを見出した。このように、適切な還元力を有しかつ鉄とモリブデン間の強い相互作用が重要であり、鉄からモリブデンへの分子内電子移動が触媒活性の向上に寄与していること示唆する結果を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度においては、様々なフェロセン・メタロセン部位を有する新規なモリブデン窒素錯体の合成に成功し、そのアンモニア生成反応に対する触媒活性の評価に成功した。その結果、フェロセン部位が触媒活性の向上に果たす役割について知見を得ることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に得られた、鉄とモリブデン間の相互作用が触媒活性の向上に重要という知見を踏まえて、より相互作用が強くなる触媒を合成する。具体的には、アザフェロセン骨格を有するPNP配位子をもつモリブデン窒素錯体の合成を試み、その物性・触媒活性について評価を行う。また、触媒反応の反応中間体の単離・合成を試み、その電子状態を明らかにする。さらに、電子受容体となるフラーレンや、光増感剤として働くポルフィリン誘導体をPNP配位子の合成およびその配位子を持つモリブデン窒素錯体の合成を行う。
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