研究課題/領域番号 |
13J08177
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
高橋 知世 名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 流暢性 / 美しさ / 使いやすさ |
研究実績の概要 |
本研究では、美的ユーザビリティ効果の生起メカニズムの解明、および、美的ユーザビリティ効果がもたらす判断の誤りを是正する方法の模索を目的としている。美的ユーザビリティ効果とは、美しいものは使いやすいだろうと思ってしまう現象である。また、流暢性とは視覚情報の処理の容易さを指す概念であり、流暢性が高いほど美しいと判断される。 前述の目的を達成するために全部で3つの実験が計画されており、今年度にはそのうち2つ目の実験が実施された。この実験ではヒューリスティック判断が美的ユーザビリティ効果の生起に関与するかどうかを検討することを目的としていた。ヒューリスティックな判断とは経験に基づく直感的な判断のことであり、論理的・分析的に考えれば無関係であるはずの流暢性・美しさ・主観的使いやすさが結びつくのは、ヒューリスティック判断によるものだと考えられた。この仮説の検討するために、利用者が主観的使いやすさをヒューリスティックに判断していたかを質問項目でチェックした。質問項目には複数の尺度を比較した上で選定したものを用いた。また、実験刺激は1つ目の実験に用いられたものの中から再選定された。 この実験から得られたデータを分析した結果、仮説に反して、ヒューリスティック判断が美的ユーザビリティ効果の生起に関与することは確認できなかった。この結果を考察した上で、2つ目の実験結果は査読付き国内学会である日本認知心理学会第12回大会において発表された。さらに、新しい分析と考察を追加した上で、査読付き国際学会であるThe 2014 Congress of the International Association of Empirical Aestheticsにおいても発表された。また、国際雑誌に投稿するために、今年度の実験で得られたデータを基にした論文が執筆中である。論文の投稿先を国際誌にするのは、流暢性と美的ユーザビリティ効果の研究に従事する研究者が日本国外に多いためである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、美的ユーザビリティ効果の生起メカニズムの解明、および、美的ユーザビリティ効果がもたらす判断の誤りを是正する方法の模索を目的としている。本年度はヒューリスティック判断が美的ユーザビリティ効果の生起に関与するかどうかを検討するための実験を実施した。結果は仮説に反するものであったが、後続実験での操作を工夫することで計画を遂行することが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に実施された実験の結果に基づいて研究計画に修正を加えた上で、後続の実験を行う。次に計画していた実験では、第一・第二の実験で用いられた刺激とほぼ同一の刺激を使用する。今後の実験では客観的使いやすさをデータ化する必要があるため、次の実験を行う前に客観的使いやすさをデータ化する方法について精査し、その測定方法を決定する。 また、実験と並行して、今年度から進めている査読付き国際雑誌への投稿準備も引き続き行う。加えて、本年度と同様に学会発表などにも参加し、国内外の研究者と積極的に意見交換を行う。
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