本研究では、美的ユーザビリティ効果の生起メカニズムの解明、および、美的ユーザビリティ効果がもたらす判断の誤りを是正する方法の模索を目的としている。使いやすそうなインターフェースでも操作エラーが多いというように、人が感じる主観的使いやすさと、機械的に計測された客観的使いやすさにはズレが見られることがある。ズレの原因の1つに、美しいものは使いやすいだろうと思ってしまう美的ユーザビリティ効果が挙げられる。 前述の目的を達成するために全部で3つの実験が計画されており、今年度は3つ目の実験が実施された。この実験の目的は主観的使いやすさと客観的使いやすさのズレを解消する方法を提案し、その有効性を検討することであった。主観的使いやすさと客観的使いやすさのズレを解消する方法として、美しさと使いやすさを判断する対象の内容をよく読むという方法が提案された。この方法の有効性を検討するために、実験参加者は2つのグループに分けられた。一方のグループは美しさと使いやすさを判断する対象の内容をよく読むよう教示され、もう一方のグループは判断対象とはまったく無関係な課題に取り組むよう教示された。 この実験から得られたデータを分析した結果、提案した方法は美的ユーザビリティ効果の生起をある程度抑制する効果があることが分かった。この結果を考察した上で、3つ目の実験結果は査読付き国際学会であるSociety for applied research in memory and cognitionにおいて発表された。さらに、新しい分析と考察を追加した上で、査読付き国内学会である日本認知心理学会第13回大会においても発表された。また、国際雑誌に投稿するために、今年度の実験で得られたデータを基にした論文が執筆中である。論文の投稿先を国際誌にするのは、美的ユーザビリティ効果の研究に従事する研究者が日本国外に多いためである。
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