磁気浮上型補助人工心臓の小型化のためには受動安定を利用した磁気浮上系の制御軸数の削減が有効的である.我々が取り扱うデバイスは薄小型化のため径方向2軸のみを能動制御し,傾きと軸方向位置を受動安定により支持している.受動安定特性の検証を行うため非制御軸方向の変動を測定した結果,空気中と食塩水を用いたポンプ拍出時にポンプ拍出時における軸方向の振動振幅は空気中と比較し使用点である2000 rpmにおいて約4割小さく,その時のインペラの軸方向平均浮上位置の軸方向浮上中心からのずれは,空気中では0.05 mm,水中では-0.06 mmであった.軸方向浮上中心からの変位量により発生する大きさが決まる受動安定による復元力は両者において大きな差異は生じず,その時の復元力は測定値から約0.3 Nであると推定されている.しかし,空気中とポンプ拍出時において振動振幅に大きな差異が生じていた.また,ポンプ拍出時には振動周波数においても自励振動であるオイルホワールと考えられる回転数の1/2の周波数での振動が生じていた.これらのことより,本デバイスにおいては受動安定より,流体のダンパー作用が制振に大きな影響を与えることが推察された.非定常流体解析を行った結果,浮上中心においてインペラが回転している時,インペラにかかる軸方向の流体力は平均6 mN,流体力の振れ幅は9 mNと十分に小さいことが示唆された.ここから,非接触で浮上回転している磁気浮上系の特徴であるインペラ浮上位置の変動が流体力の変動を生じる可能性が示唆された.これらより,制御軸数の削減には受動安定のみならず,インペラの浮上位置変動による流体力への影響が多大であることが推定された.
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