本研究の目的は、グローバル資本主義が抱える様々な問題性に対処しうる新たな構想として、コスモポリタニズムが如何なる意義・可能性を有しているかについて明らかにすることにある。 この目的を達成すべく、第三年度もいくつかの観点から複数の研究を進めてきた。その中でも本年度特に重視していたのは、1990年代以降のコスモポリタニズム研究、新しいコスモポリタニズム(new cosmopolitanism)に関する理論的検討である。コスモポリタニズムの起源は古代ギリシャまで遡るとも言われるが、高度にグローバル化し、相互依存が深化した世界を解釈するための理論として、1990年代以降再び注目を集めてきた。こうした動きはしばしばと「新しいコスモポリタニズム」と呼ばれ、社会学に留まらず、人類学や政治哲学、政治学、カルチュラル・スタディーズといった幅広い分野から関心を集めてきた。当該年度はこうした新しいコスモポリタニズムの議論、特に社会学的なコスモポリタニズムに関する包括的な再検討を行う中で、そこで一体何が問われ、問題化されてきたのかについて明らかにしてきた。 この研究成果については、日本社会学会、カルチュラルタイフーンといった国内学会、そして国際学会、IFSSO(International Federation of Social Science Organizations)にて報告を行ってきた。さらに2016年度にはその内容の一部が編著論文として収録される予定となっている。
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