研究課題/領域番号 |
13J08199
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中間 智弘 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 国際情報交換 / イギリス / 原始ブラックホール / 数値相対論 / 宇宙論 / 相対論 / インフレーション |
研究概要 |
大質量星がその一生を終えるとき、自らの重力によってつぶれてブラックホールが形成される。 一方で、星などの構造ができるはるか前の初期宇宙でもブラックホールが形成した可能性があり、このようなブラックホールを原始ブラックホールと呼ぶ(Primordial Black Hole, 以下PBH)。 PBH形成のためには、初期宇宙でゆらぎの振幅が1のオーダーと非常に大きい必要があるが、PBH形成を引き起こす初期宇宙のモデルも提唱されている。PBHは発見されておらず、宇宙線、重力レンズ、重力波などの多くの観測実験からその存在量に上限が得られている。PBHを研究する意義としては例えば以下の2つがあげられる。1、超巨大ブラックホールの種の候補としてのPBH : 多くの銀河の中心には超巨大ブラックホールが存在すると考えられているが、その起源はわかっていない。PBHはその起源を説明し得る。2、ダークマターの候補としてのPBH : 宇宙には正体不明の重力源が存在することが知られているが、PBHはそれらダークマター(の一部)である可能性がある。 このようにPBHはその存在自体が魅力的であるが、それだけでなく、PBHを研究することで初期宇宙に対する示唆が得られる。PBHを観測と矛盾するほど作りすぎてしまう初期宇宙のモデルを棄却できるためである。私は特別研究員の3年の採用期間の間に、PBH形成過程などを詳しく調べることで初期宇宙を調べる計画であった。13. 研究発表、[雑誌論文]の1の論文では、様々な初期ゆらぎプロファイルに対するPBH形成条件を調べた。初期条件としての様々なゆらぎのプロファイルを与え、数値シミュレーションを何万回と繰り返し、PBHが形成されるための初期条件に対する条件を得た。 これは申請時に述べた計画の一年目での計画に沿った研究である。この研究においては、数値計算、執筆に至るまで全て私が行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では当該年度にPBH形成シミュレーションを完成させ、初期条件であるゆらぎのプロファイルを様々に与え、形成条件を詳細に調べることが主な目標であった。13. 研究発表、[雑誌論文]の1の論文はこの課題に対応している。また、PBH形成と非形成の境界近傍で起こる臨界現象についても調査を開始し、結果も得られているので、計画通り順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は各質量のPBHの存在量を計算することが主な課題となる。そのためにはまず臨界現象の研究を完成させる必要がある。また、申請時に触れなかった新たな課題として、PBH形成における非球対称性の効果がある。 PBH形成のシミュレーションの先行研究では、PBH形成が球対称なゆらぎから生成されると仮定されていた。これは良い近似であることが理論的にも知られているため、私の研究計画でも球対称シミュレーションを前提として研究を進める予定であった。しかし、現実には初期のゆらぎは完全に球対称ではなく、非球対称性がPBH形成に影響を与える。この効果を詳しく調べた先行研究はないので、この点についても調べたい。
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