研究課題/領域番号 |
13J08207
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
田中 詩穂 東京農工大学, 大学院生物システム応用科学府, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ABCトランスポーター / Bt毒素 / 二電極膜電位固定法 / SPR解析 / Sf9細胞 |
研究概要 |
本年度は、本研究で最終的に獲得する予定である改変型Bt毒素とABCトランスポーターの結合性状および、Bt毒素のABCトランスポーターを介した細胞に与える毒性レベルを評価する手法の確立を目指し、実験を行った。 結合性状の解析については、SPRを用いたBt毒素とABCトランスポーターの相互作用解析を行い2分子の結合親和性を示す種々のパラメーターを導き出すことを試みた。その過程では、昆虫培養細胞Sf9細胞に強制発現させたABCトランスポーター分子を精製するという困難な過程があったが、申請者らは、ABCトランスポーターを発現させたSf9細胞より細胞膜画分を調整し、非イオン性の界面活性剤n-Dodecyl-β-D-maltosideで可溶化した後に、ABCトランスポーター分子のC末端に付けたFlag-tagを用いてアフィニティー精製を行うことにより、高い精製度で、構造を保持した状態のABCトランスポーターを精製することに成功した。精製後のABCトランスポーターを使用し、SPR解析を行ったところ、ABCトランスポーターがBt毒素に結合することを確認できた。 Bt毒素の細胞に与える毒性レベルの評価を行うためにアフリカツメガエル卵母細胞を用いた二電極膜電位固定法の手法確立にも取り組んだ。実験を行うために必要な機器を揃え、アフリカツメガエル卵母細胞にABCトランスポーター分子を発現させるための発現ベクターの構築を行いった。実際に、アフリカツメガエル卵母細胞上に発現させ、Bt毒素を添加した際にBt毒素の毒性により卵母細胞の膜電位が変化することが確認できた。その感度は、従来の培養細胞を用いたBt毒素の毒性レベルを評価する実験系よりも高く、今後、期待通りの改変型Bt毒素が獲得できた際の評価系として実用可能であることが期待された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、改変型Bt毒素の評価系の確立を目標とし、2種類の異なる手法を材料や必要機器の準備から取り組んだ。その結果、予定していた2つ実験手法を改変型Bt毒素の評価系として使用するに値する感度と正確性があることを示すデータを取得するところまで設定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、最終目的である活性スペクトルを変換した改変型Bt毒素を獲得するために、毒素を選抜、評価する実験系として、結合親和性を評価するSPR解析と細胞に対する毒性を評価する二電極膜電位固定法のどちらが有効な手段であるかを検討する。宿主昆虫に対する活性が異なる種々の毒素を用いて、それら毒素の個体に対する活性と結合親和性または、卵母細胞で観察される細胞に対する毒性との相関関係の有無について解析していく予定である。また、本研究で最も困難な過程の1つであるSPR解析に使用する精製したABCトランスポーターを用意する過程について、培養細胞よりもより簡便であることが期待される酵母でのABCトランスポーターの発現も試みる予定である。
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