私は平成26年度、カーボンナノチューブにおける伝導率について勢力的に研究を行った。このカーボンナノチューブの研究では、今までのカーボンナノチューブの研究では詳しく議論されていなかった特異なカーボンナノチューブの振る舞いを系統的に理解することに成功した。 この研究においては一次元系であるカイラルカーボンナノチューブのチューブ軸方向に電場をかける事により、カーボンナノチューブの周方向に電流が流れる事を明らにした。この現象はナノチューブに対して電場をかけた場合に、螺旋型の電流が発生し、古典的なコイルのように磁化が誘起される。すなわちナノチューブにおいて量子的なナノスケールコイルの新現象が発見されることになる。我々の類似の先行研究としてBC2Nのシートにおいて異方伝導性が現れる事が予測されているが、カーボンナノチューブにおいて本研究のような系統的な計算を行ったのは本研究が初めてである。我々は電場をかけた場合のカーボンナノチューブの周回方向の伝導率を解析的に求めて、具体的にさまざまなカイラリティーのナノチューブに計算を適用し、カイラルナノチューブの周方向の伝導率の定性的理解を得た。 このカーボンナノチューブに関する研究を、国際学会にて口頭発表をした。昨年度行ったトポロジカル絶縁体表面におけるホール効果の計算まとめ及び論文の執筆活動も並行して行っている。 平成26年度は、さまざまな理由で当初予定していた研究計画の研究内容とは、多少異なるものとなってしまったが(具体的にはカーボンナノチューブの計画は当初予定していなかった研究内容である)、自身の研究内容の裾野を広げるという意味においても大変意義のある研究活動ができた。同時に新しい研究分野にも着手した事によって将来的な研究の展望も明らかにする事ができた。
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