研究課題
真核生物ゲノムでは、タンパク質情報をもたない領域から長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)が数多く転写されている。しかし、lncRNAの分子機能には不明な点が多い。申請者の所属研究室は、真核細胞のモデル生物である分裂酵母において、グルコース飢餓応答に関わるlncRNAを見出だし、これをmlonRNA(metabolic stress-induced long noncoding RNA)と名付けた。グルコース飢餓が起こると、mlonRNAは糖新生遺伝子fbp1の転写制御領域から転写され、この領域のクロマチン構造を脱凝縮させる。その結果、fbp1遺伝子の転写が大規模に活性化される。しかし、mlonRNAがどのような分子機構によってクロマチン構造変換を引き起こすのか、またfbp1で見出されたクロマチン制御機構が他の遺伝子でも用いられているかは不明であった。本研究の1・2年目の成果により、mlonRNAが転写されることで転写活性化因子Atf1がfbp1転写制御領域に効率的に結合できるようになり、その結果クロマチン構造変換およびfbp1の転写活性化が引き起こされることがわかった。そこで、当該年度はmlonRNAがどのようにしてAtf1の結合を促進するかを検討した。その結果、mlonRNAは転写抑制因子であるTup11・Tup12の機能を阻害することでAtf1の結合を促進していることが明らかになった。また、ゲノムワイド解析を行った結果、同様の制御を受けているストレス応答遺伝子を多数見出した。以上から、転写制御領域から生じるlncRNAが転写制御タンパク質の結合を制御することで、遺伝子発現が巧妙に制御されていることが示唆された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nucleic Acids Research
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10.1093/nar/gkw142