研究課題
本課題では、重金属集積植物が重金属性土壌に適応進化する過程で獲得した重金属「超」集積能における選択的スプライシングの重要性を検証することを研究目的の一つとしている。申請者らはすでに、亜鉛集積植物であるNoccaea japonicaが獲得した、ZNT1/ZIP4という金属輸送体ファミリー遺伝子のスプライシングバリアントが亜鉛の取り込み輸送体をコードすることを見いだしていた。本年度においてさらに解析を進めた結果、ZNT1/ZIP4はアブラナ科で広く保存されている遺伝子であるが、亜鉛取り込み輸送体とは別の機能を持つタンパク質をコードすることが示唆された。つまりN. japonicaはなんらかの生理機能をもつNjZNT1のオリジナルフォームを保持しつつ、亜鉛輸送体であるスプライシングアイソフォームを獲得したと推測される。現在、ZNT1/ZIP4のオリジナルフォームの機能を明らかにするために、シロイヌナズナのZNT1/ZIP4変異体解析および特異抗体を用いた生化学的手法による機能解析を進めている。また、NjZNT1のスプライシングアイソフォームとオリジナルフォームの発現比率は根と地上部で異なることがわかり、二つのタンパク質は器官・組織によって使い分けられていることが示唆された。さらに本研究課題では、植物の養分欠乏ストレスへの適応進化における選択的スプライシングの重要性を検証することを第二の目的としている。このために先ず、シロイヌナズナの根において養分欠乏ストレスに応答する選択的スプライシングを全ゲノムレベルで網羅探索することを試みることとした。H25年度においては、12種類の養分をそれぞれ欠如した培地に暴露したシロイヌナズナの根からRNAを調整し、Hiseq2000によるRNA-seq解析を行った。H26年度において実際に得られたRNA-seqデータのスプライシングバリアント解析を行う。
3: やや遅れている
重金属集積種由来遺伝子の機能解析はおおむね順調に進んでおり、H26年度において論文としてまとめる予定である。一方RNA-seq解析については、本年度内に解析を終了し、次年度に向け栄養応答性の選択的スプライシングの候補リストを作成する予定であったが、栽培条件やサンプル調整における条件検討等で時間を費やしたたぬ、当初の予定より3ヶ月ほど遅れをとっている。
重金属集積種における金属輸送体のスプライシングアイソフォームの機能解析については、H26年度に論文にまとめ、植物における初の機能性金属輸送体スプライシングアイソフォームとして世界に先駆けて報告することを目指す。一方、RNA-seq解析が終了次第、スプライシングバリアント解析を行い、その結果をもとに候補リストを作成する。有力候補については、PCRによる再現性確認試験を行いつつ、その変異体を各リソースから取り寄せ、適宜表現型解析を行っていく。加えて、既に公開されているシロイヌナズナのアクセッションズのRNA-seqデータを利用し、候補遺伝子群におけるスプライシングパターンと養分欠乏耐性との関連性を調査する。
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http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/syokuei/profile.html#nishida