研究課題/領域番号 |
13J08331
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
遠藤 護 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 高繰り返しモード同期レーザー / 光周波数コム / 高分解能分光器 |
研究概要 |
繰り返し周波数がGHzを超えるようなフェムト秒モード同期レーザーの縦モードは、小型の分散素子で容易に分解することができる。縦モードの光周波数は極めて精密に制御可能であり、そのように制御されたモード同期レーザーの出力を光周波数コムと呼ぶ。応用例としては、天文用分光器の波長校正、任意は佳の光パルス生成などがあげられる。しかし、GHzを超えるフェムト秒レーザーは開発が難しく、またこれまでに開発されてきたものも装置が大型・複雑で扱いが困難であるという欠点があった。博士課程では高い繰り返し周波数(10GHz以上)を持つレーザーの開発と、またそれを用いた分光応用を続けている。25年度に行った研究実績は、1. モード同期レーザーの高繰り返し化、2. 高繰り返し光周波数コムによる分光器の波長校正、そして3. コム分解精密分光である。 ①当初の予定では、博士課程3年間を通して繰り返し周波数10GHzのモード同期レーザーを開発することが目標であった。しかし、昨年度末に15GHzという非常に高い繰り返し周波数のカーレンズモード同期Yb : Y_2O_3セラミックレーザーの開発に成功した。この値はカーレンズモード同期としては世界最高の繰り返し周波数である。 ②低繰り返し(250MHz)の光周波数コムに位相同期することで、これまでに開発した4GHzのレーザーの光周波数を安定化した。こうして得られた4GHz光周波数コムの縦モードは、修士の研究で開発した高分解能分光器によって鮮明に分解できる。また、全ての縦モードの絶対周波数はルビジウム原子時計にロックしているため、分光器の波長校正は極めて精密に行うことができた。 ③高繰り返しの光周波数コムを用いることで微量ガスの検知を高精度かつ高速に行うことが可能と言われている。しかし、どの程度の繰り返し周波数があれば十分か、という点に関しては議論がされていなかった。私は数値シミュレーションによって、適切な繰り返し周波数と、それを用いたときの分子の遷移周波数の決定精度を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は博士課程3年間で10GHzの繰り返しを達成する予定であったが、一年目で15GHzという値を達成することに成功した。これにより、当初予定していなかった任意波形を持つ光パルス生成、といった応用実験を行う余裕ができたため、計画以上に進展している、といえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに4GHzのモード同期レーザーの光周波数安定化には成功したが、15GHzのモード同期レーザーについてはまだ行っていない。15GHzのモード同期レーザーを安定化し光周波数コムとすることができれば、世界最高の繰り返し周波数を持つカーレンズモード同期による光周波数コムとなる。また、これを分光器により縦モード分解し、空間位相変調器により各モードの位相及び強度を変調し、再度合成することで、任意波形を持つ光パルス生成が可能となる。本年度はこれらの研究を行う予定である。 当初の研究計画では、中赤外の高繰り返し光周波数コムを開発するという予定であったが、これに関しては現在修士の学生と共に行っていく予定である。
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