研究課題/領域番号 |
13J08342
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岡部 孝裕 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 熱物性 / 生体組織 / 医療診断 / サーミスタ / 悪性黒色腫 / 温熱治療 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,生体組織の非侵襲的な局所熱物性測定手法を確立し,熱物性の観点から新たな医療診断技術を確立することを目的としている.上記の目的を達成するためにこれまで固体熱物性テスターを用いた新たな熱物性推定手法を開発してきたが,熱物性値の妥当な値は得られるものの,その精度(皮膚表面温度及び熱物性)に問題があり,医療診断に応用することは困難である可能性があった. そこで,本年度は,上記の問題を克服するために,新たに保護熱源法を応用した高精度表面温度プローブを開発し,様々な資料の熱物性計測や性能評価を行った.本プローブは物体の表面温度の高精度・高確度を実現するための非定常保護熱源を用いた局所温度センサーであり,2つ以上のガラス封入型NTCサーミスタとFEPチューブで構成されている.1つは物体の表面温度を計測するセンサーとして,それ以外はセンサー部分から損失する熱量を限りなく0に近づけるための保護熱源として機能する.性能評価の結果,ヒトの皮膚のような室温よりも温度の高い試料においても,高精度・高確度に表面温度及び熱物性を計測することが可能となった. また,本研究室で開発を進めている腹部温熱装置を用いた温熱治療時の血流増加を見かけの熱伝導率の変化の計測による検出に応用した.これにより,温熱治療中における見かけの熱伝導率と血流の増加の関係を得ることができた. さらに,新たに開発したプローブの非侵襲性やその高い精度・確度に着目し,皮膚がんの一種である悪性黒色腫(メラノーマ)の早期診断に応用することを着想し,その実現可能性を数値計算によって検討した.その結果,開発した高精度表面温度プローブを用いることで,悪性黒色腫の早期診断に応用可能なことが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
物体の表面温度や熱物性を高精度・高確度に計測可能なプローブを開発し,熱物性による医療診断に応用可能な性能を示すことができた. 実際に,温熱治療時の血流増加の診断を見かけの熱物性より可能な事を示した.また,数値計算を行うことで,血流を直接計測しているのではなく,血流増加による生体内温度分布の変化によって間接的に血流増加を検出していることが分かった. さらに,これまで困難とされてきた悪性黒色腫の早期診断に応用できる可能性を数値計算によって示した.現在,皮膚腫瘍を有するマウスを用いた動物実験や実際の悪性黒色腫の患者に対する臨床実験の準備を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
現在準備を進めている高精度温度プローブによる悪性黒色腫の早期診断の動物実験と臨床実験を行い,熱物性計測による新たな医療診断技術の実証を行う.さらに,より詳細な生体内熱伝導数値解析も平行して行い,本手法の適用可能条件等の検討を行っていく. また,本プローブを用いて,ヒトの体の各部位における熱物性計測を様々な条件下で行い,データベースの構築を行う.
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