研究課題/領域番号 |
13J08344
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
白 楊 名古屋大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 訳語 / 厳復 / 梁啓超 / 森田思軒 / 欧文脈 / 欧化語法現象 |
研究概要 |
博士一年目は、修士論文を踏まえ、厳復の訳語と日本語の新漢語を、訳語の性格、翻訳方法、定着語と廃語などのいくつかの面で、対照研究を行うことを計画した。そして、近代宣教師から梁啓超までの間の翻訳著書における翻訳語を摘出し、厳復の訳語と同じ研究方法で調べていくことを計画した。 この一年においては、翻訳語彙と翻訳語法の二面から研究を進めた。語彙の面では、「理学」という語をはじめ、厳復が訳出できなかった「心理学」「物理学」「地理学」「倫理学」「生理学」「性理学」「数理学」「法理学」など、「~理学」という形式の訳語も調べた。また、造語法の視点から、「理学」と「~理学」という形式の訳語との関係を検討した。一方、近代中国における翻訳著書、特に日本語から訳した著書を整理し、梁啓超の翻訳と森田思軒の翻訳に注目した。そして、森田思軒訳『十五少年』(1896)と梁啓超がそれを重訳した『十五小豪傑』(1902)を対照し、翻訳方怯・訳語の選択・訳語の借用などの面から調べ始めた。 語法の面では、日本語の「欧文脈」にあたる中国語の「欧化語法現象」についての先行研究を調べた。先行研究で言及されている「欧化語法現象」は訳三十項目ある。その中では、①第三人称代名詞―他(彼)・她(彼女)它・它們(ものを指す第三代名詞)の出現②「一種・一個」など「一+~」のような数量詞の使用、③連体修飾の使用――名詞+「的」+名詞(名詞+の+名詞)、④複数表現「~們」(「~たち」にあたる)、⑤接尾辞「~化」などは、日本語の「欧文脈」と関わりがあると考えられる。そして、その中から、「一種」に注目し、「一種」という訳語の歴史及び「一種」の使用上の変遷、特に副詞として使用されてきた「一種」(例えば、「一種不思議な力」)の使い方を調べた。 この一年では、雑誌で発表できるまでの成果を出していなかったが、長い目で見れば、翻訳語彙と翻訳語法の先行研究を整理し、今後の研究の方向、そして、これから重点的に調べていく研究のポイントを具体化した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
訳語の研究では、計画を全部達成してなかったが、翻訳語法の研究が計画より進んでいる。雑誌で発表できるまでの成果を出していなかったが、長い目で見れば、翻訳語彙と翻訳語法の先行研究を整理し、今後の研究の方向、そして、これから重点的に調べていく研究のポイントを具体化した。
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今後の研究の推進方策 |
この一年で整理した研究の重点を踏まえ、研究を進めていく。 語彙の面では、引き続き厳復の訳語と新漢語、主に西周の訳語を対照する。また、森田思軒訳『十五少年』(1896)と梁啓超がそれを重訳した『十五小豪傑』(1902)を対照し、翻訳方法・訳語の選択・訳語の借用などの面から具体的に調べていく。 語法の面では、整理できた「欧化語法現象」を一つづつ具体的に研究していく。
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