【インフラトン起源の重力波生成】 インフレーション終了期に、インフラトンのコヒーレント振動がもたらす重力子(重力波)生成を研究した。まず、重力及びインフレーションを仮定した場合に理論的に最小限のセットアップを研究し、重力波生成が実際起こるものの、観測に足るだけの振幅を持たないことを示した。しかし、インフラトンと重力とが結合する(=最小限でない)場合には、重力子を含む特徴的な粒子生成が起こる可能性がある。そこで特に、素粒子標準模型のヒッグス場をインフラトンとして用いるような模型に現れる結合に着目し、粒子生成の解析を行った。まずこのような系を一般に解析する手法を提案した後、微分型と呼ばれる結合を持つ場合の粒子生成を研究した。結果として、理論に不安定性があること、及び重力子の共鳴生成が起こる可能性を指摘した。また、博士論文において微分型でない結合を持つ場合の解析も行った。 【ヒッグス相転移起源の重力波生成】 宇宙の相転移が重力波生成を伴う可能性は広く知られているが、標準模型ヒッグス場による相転移は非常に弱く、重力波生成も非常に少ない。一方、素粒子標準模型は自身の欠陥のため拡張が必要であり、そのような拡張において新たなスカラー場が現れることが多い。このスカラー場の存在に起因して、ヒッグスの相転移の性質が変化し、観測可能な痕跡が生まれる可能性が研究されていた。ここで私は、先行研究が「熱化」したスカラー場のみを考えていることに着目した。実はスカラー場は必ずしも「熱化」しておらず、時間変化する期待値を持って「運動」することがある。このスカラー場の時間変化が、標準模型ヒッグス場の転移スケール及びその4点結合のエネルギー依存性を変更し、相転移が1次相転移(強い相転移)となる可能性を研究した。実際、模型のパラメータによっては1次相転移が起こり、それに伴う重力波が将来的に観測可能であることが示された。
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