研究概要 |
本研究では、ショウジョウバエの睡眠制御遺伝子を特定することを目的とし、新たな時期特異的遺伝子制御システムの構築を試みた。 睡眠の分子生物学は、ショウジョウバエにおける睡眠研究によって大きく進歩したが、発生を考慮していないといった問題点が依然存在している。本問題は、睡眠の遺伝学的研究のみならず、行動の分子メカニズムを探る上で共通の課題として認識されるべき問題である。概日リズムが消失するperiod変異体の発見(Konopka & Benzer, 1971, PNAS)以降、行動を制御する遺伝子の探索が進められている。しかし、遺伝子の機能阻害によって得られる表現型が、発生後の影響なのか、あるいは発生などを介した二次的な影響であるかという問題は、これまでほとんど検討されてこなかった。行動遺伝学の知見を将来社会に還元させる過程において、本課題は疾患の理解や創薬におけるターゲット分子を考える上で、解決が不可欠な課題である。睡眠ならびに行動の遺伝学が直面している上記課題を解決するために、適切な時期特異的遺伝子制御システムを構築することが重要であると考える。 時期特異的なloss of functionを解析するために、当初、時期特異的なRNAiの実装を試みていたが、近年開発された新規遺伝子改変技術であるCRISPR/Cas9システムの導入も並行して実施した。その結果、CRISPR/Cas9システムを用いて、内在性の遺伝子にGFPなどを融合させることに成功した。GFP融合タンパク質を用いることにより、内在性の発現パターンが明らかになるとともに、GFPをターゲットとしたプロテインノックアウト技術を用いて、時期特異的なloss of functionを検討することが可能となった。
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