研究課題/領域番号 |
13J08400
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研究機関 | 沖縄国際大学 |
研究代表者 |
山田 浩世 沖縄国際大学, 地域文化研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 近世琉球 / 王府官人制度 / 人事制度 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本・中国への従属関係を前提に「小国」として独自の国家展開を果たした近世琉球社会、とりわけ、対外的な交易を家臣団統制の柱として成立していった官人制度が、どのように構成されていたのか、どのような特質を有していたのかを明らかにしようとするものである。そこでこれらの問題を明らかにするため、当時の琉球士族がどのように王府に官吏として登用されていたのか、王府はどのように必要な人材を養成しようとしていたのかを検討することとしている。 法政大学沖縄文化研究所及び東京都立中央図書館(特別文庫所蔵室)での史料収集調査を実施するとともに、東京大学史料編纂所での史料調査を実施し、近世琉球期の文教政策に関る先例を集成した『琉球學制文事資料』や東京大学史料編纂所に所蔵されている『尚裕家文書』の収集を行った。 本年度までに当該史料などの分析を通じて、琉球においてどのような官吏登用策が用いられ、それによってどのように政策の実行が担保されていたのかについて明らかとなってきた。そこではさまざまな業務が柔軟に評価される一方で、対外的な使節派遣が評価制度と連動しており、内外制度の一体的な運用が特徴的に見られた。同様に久米村官人制度の構造も内外の役職が密接に結びつく構造となっていたことが明らかになりつつあり、王府の組織構造の特質の一端が明らかになりつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、日本・中国への従属関係を前提に「小国」として独自の国家展開を果たした近世琉球社会、とりわけ、対外的な交易を家臣団統制の柱として成立していった官人制度が、どのように構成されていたのか、どのような特質を有していたのかを明らかにしようとするものである。そこでこれらの問題を明らかにするため、当時の琉球士族がどのように王府に官吏として登用されていたのか、王府はどのように必要な人材を養成しようとしていたのかを検討することとしている。 昨年度までに王府の政策立案過程や功績にたいする評価制度及び人事システムの検討を進め、近世琉球期の王府制度の基層的性質が徐々に明らかになりつつある。また、官人制度の構造的把握も進んでおり、当初予定していた「異国方」「冠船方」「評定所」の検討についての多くの知見が蓄積しつつある。一方で、最終的な成果報告が学会誌などで刊行されていない部分もあり、平成27年度はそれらの刊行を進めていく必要がある。全体としては概ね計画は順調に進展しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度では、昨年度に引き続き王府官人制度の構造に関する研究を進めるが、とりわけ王府の政策立案・運営を行う「評定所」の検討を進める予定である。本年度までの史料調査によって必要とされる史料の収集が進んでいるため、昨年度に行った研究報告の論文化と合わせて進めていく予定である。 史料収集が順調に進んだ一方で、史料収集に力点を置いたために十分に成果を論文として公表できなかった冠船方に関する分析などが今後の課題として残った。研究課題の達成のため、引き続き尚家文書及び家譜史料、新たに確認された諸史料を総合的に精査し、王府官人制度の構造的特徴と国家運営の特質を今後も検討していく予定である。
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