研究概要 |
本研究では、2-(2-イミダゾリニル)フェノラト配位子(Himn)または2-(1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)フェノラト配位子(Hthp)を有するルテニウム(III)錯体([Ru^<III>(Himn Xbpy)2]^<2+>または[Ru^<III>(Hthp)(bpy)_2]^<2+> ; bpy=2,2'-ビピリジン)における塩基添加による特異な還元反応の反応機構を解明し、これを利用した新規機能性錯体の創製を目指す. 本年度は反応の詳細について明らかにした。 ・Ru(III)錯体の塩本添加による酸化還元挙動の調査 上記のRu^<III>錯体の重アセトニトリル錯体と塩基の反応を^iH NMR分光法によって追跡した。その結果、[Ru^<III>(Himn)(Xbpy)_2]^<2+>においてはイミダゾリニル基が2電子酸化されイミダゾラト型錯体が生成するためにRu^<III>中心が還元されることがわかった。一方、[Ru^<III>(Hthp)(bpy)_2]^<2+>ではテトラヒドロピリミジル基からピリミジル基へ4電子酸化されることでRu^<III>中心の還元が起こり、[Ru^<II>(Hthp)(bpy)_2]+[Ru^<II>(pym)(bpy)_2]^+(pym-=2-(2一ピリミジル)フェノラト)が3:1で生成することがわかった。 ・テトラヒドロピリミジル基の電気化学的4電子酸化反応 サイクリックボルタンメトリー(CV)を用いて電気化学的手法による配位子の酸化反応を試みた。その結果、塩基存在下ではRu^<II/III>の1電子酸化を行うだけでRu^<III>錯体間の不均化反応を経てテトラヒドロピリミジル基の4電子酸化反応が進行することを明らかにした。さらに、大過剰の塩基存在下で微分パルスボルタンメトリーを測定することで、プロトン共役電子移動(PCET)反応の特徴である酸化還元電位のシフトが観測された。以上の結果から、テトラヒドロピリミジル基の4電子酸化はPCETによって誘起されていると考えられる。
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