研究実績の概要 |
本研究では、2-(2-イミダゾリニル)フェノラト配位子(Himn-)または2-(1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)フェノラト配位子(Hthp-)を有するルテニウム(III)錯体([Ru(Himn)(bpy)2]2+または[Ru(Hthp)(bpy)2]2+; bpy = 2,2’-ビピリジン)における塩基添加による特異な還元反応の反応機構を解明し、これを利用した新規機能性物質の創製を目指す。これまでの研究で、この特異な酸化還元挙動は配位子の2電子または4電子酸化によって錯体の金属中心が還元されることによると、明らかになった。本年度は反応機構の解明を試みた。また、このような分子に基づいた多電子移動反応の研究をより多電子の移動を媒介できると予想される金属酸化物ナノ粒子に拡張することは酸化還元活性を有する機能性物質を構築する上で意義深い。そこで、本年度は上記ルテニウム錯体の反応機構の解明に平行して金属酸化物ナノ粒子の多電子移動反応についても研究を行った。 Ru(III)錯体の反応機構調査 Stopped-flow分光光度計を用いて、ルテニウム(III)錯体[Ru(Hthp)(bpy)2]2+と過剰量の塩基の溶液を混合した後の吸収スペクトルの時間変化を測定した。その結果、混合後1ミリ秒後には既に中間体が生成しており、2段階以上の反応段階が存在することがわかった。しかし、複雑な反応過程が組み合わさっているためこれ以上の解析は難しいと考えられる。 金属酸化物ナノ粒子の多電子移動 還元されたアモルファスTiO2ナノ粒子とZnOナノ結晶を反応させることで、TiO2の伝導帯エネルギーレベルがZnOのものよりも高いことが示唆された。また、アモルファスTiO2ナノ粒子には2種類以上の異なるエネルギーレベルが存在することが示唆された。
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