研究課題/領域番号 |
13J08528
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
眞杉 侑里 立命館大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 買売春 / 私娼 / 酌婦 / 出歯亀 / 自然主義 |
研究概要 |
本研究の目的は、従来検討されてこなかった私的売春の実態を明らかにすることにより、近代日本における売春の問題の「陰」の部分を補完し、それが同時代においてどの様な意味を持っていたのかを明らかにすることにある。そのための課題として、次の2点を設定した。 1. 私的売春の具体的営業内容およびその構造はいかなるものか 2. 私的売春はいかなるかたちで需要されたのか 上記の課題設定をもとに研究を進めた結果、次の成果を得られた。 1. 私的売春の具体的営業内容およびその構造はいかなるものか 営業実態が不透明である私的売春営業の実態を群馬県『上毛新聞』記事をもとに明らかにすることに取り組んだ。明治期後半において私的売春の担い手が芸妓、酌婦であり、彼女らが飲食店を行き来する形で売春が行われていたという2012年度の成果を引き継ぐ形で、本年度はさらに店舗ごとの具体的な立地や営業規模について分析、報告を行った。これにより、売春の具体的営業内容については、概ね明らかにすることができた。 2. 私的売春はいかなるかたちで需要されたのか 私的売春の実態を踏まえて、そこに集まる客が私的売春をどのように捉えていたのかという点(需要者の問題)を検討した。ここから、新聞紙上で私娼と関連して用いられる「自然主義」「出歯亀」の単語をキーワードとして、私的売春が「恋愛」的な気分を満足させるものとして選ばれていたことが明らかになっている。こうした営業がどう広がっていくのかについては、現在調査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまで具体的営業が不明であった私的売春について、営業内容の具体的な部分を解明しえた点が大きい。こうした基礎的な部分が明らかになったことによって、客(需要者)側の意識についても踏み込んだ研究が行えた。
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今後の研究の推進方策 |
具体的営業内容、それの需要のされ方については明らかになったが、こうした売春のあり方が同時代において広がりを持ちうるのかという点について、今後検討していく必要がある。そのため、営業者の地理的な分布についての検討を行う。 また、こうした動向が近代日本における売春に関する規範とどう関係するのかという点も今後の課題となる。これについては、売春、性に関する論説を分析することにより同時代の規範を明らかにし、その中で本研究の扱った事例がどのように扱われているのかを分析していく。
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