研究課題/領域番号 |
13J08544
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野原 将揮 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 上古中国語 / 中国語音韻史 / 出土資料 / 楚簡 / 中国語諸方言 |
研究概要 |
1. 中古音書母の上古音価 中古音書母は従来の研究(主に諧声系列の整理)によると、少なくとも5種の上古音声母に由来するとされる。本研究では昨年度までの基礎研究をもとに、戦国楚簡の通仮字を中心に研究を進めた。いくつかの文字、たとえば「申」、「奭」、「首」、「獣」、「守」、「少」等の文字はその諧声関係から上古音価を求めることは出来ないが、出土資料に見える通仮字を整理し、T-typeとL-type等の仮説と照らし合わせることにより、再構が可能となった。また上古音書母とビン語書母との対応関係、「少」字の上古音価については別稿にて扱う予定である。 2. 清華大学蔵戦国竹簡に見える通仮字について 昨年度より、清華大学蔵戦国竹簡に見える通仮字について整理を加えている(以下清華簡と略称す)。清華簡は盗掘資料であるため、出土した時期、場所は不明であるが、楚系文字の特徴が多く見られることから楚簡と考えるのが現在多くの研究者の見解である。従来から指摘があるように、清華簡にはこれまでに出土した楚簡には見られないような通仮例が多いが、通仮字に整理を加えてみると、他の楚簡の音韻体系と大きく異なる点は寧ろ少なく、同じ音韻体系を反映していることが明らかとなった。 3. 方言調査 昨年度より継続して、福建省寧徳市福鼎市店下鎮の方言調査を進めている。全体の記述は今年度で概ね終了した。ただし細かな点については再度調査を要するため、平成26年度も継続する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
毎年新たな資料が公表されており予想以上に時間を費やしているが、おおむね順調と言ってよい。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に関しては、主に秦簡、漢簡について検討を加えていく予定である。そうすることによって、通時的な音変化について何らかの知見を得ることができると思われる。方言調査に関しては、昨年度まで調査していた調査地点を終了する予定である。
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