研究課題/領域番号 |
13J08581
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
前山 悠 学習院大学, 文学部, 特別研究員DC2
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キーワード | ペレック / 草稿 / 文学的制約 / レアリスム / ユダヤ |
研究概要 |
今年度前半は、フランス国立アルスナル図書館に付属するジョルジュ・ペレック協会において、ペレックがアルファベットのEを一度たりとも用いずに書き上げた小説である『煙滅』の草稿を対象とした研究を行った。同作品の草稿としては、全3種類の清書原稿および300ページ相当の構想ノートが残されているが、これらはほとんど存在さえ公には知られていなかった資料であり、今回の研究で日の目を見た意義は大きい。まず、それら手書き原稿を逐語的に解読しながら、全ページのデジタル化を行った。その後、本格的な分析に移り、ペレックの初期の構想段階から最終稿に至るまでの執筆過程を、あらゆる作業段階にわたって可能な限り詳細に再現した。この研究成果となる論文は、ジョルジュ・ペレック協会のホーム・ページにおいて掲載されている。もともとペレックの草稿はほとんど未開拓に近い研究領域であったが、本研究によって『煙滅』のみならず、ペレック作品の草稿研究それ自体の基盤となりうる業績を提出できたと考えている。 今年度後半には、ペレックが「社会学的」な実践として残したテクストを検討した。『煙滅』におけるEの使用禁止が典型的な例となるように、ペレック作品の創作において「制約」の概念は不可欠な要素であるが、ペレックの社会学的実践においても同様に様々な規則や制限が重要な役目を果たしているという事実は等閑視されていた。そこで本研究では、ペレックにおいては文学的創作での制約の利用が社会学的な実践に応用されるという見地から検討を行った。その成果は、日本フランス語フランス文学会関東支部大会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
草稿研究は本来非常に時間がかかる種類の作業だが、それが資料の全転写も含めて半年で結果を出せたことの意義は大きい。また、残る半年でも、ペレックの社会学的実践という一つのテーマについてまとまった成果を出し、学会発表にまで漕ぎ着けられたことから、研究計画は極めて順調に進展しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究は、資料収集・調査に関するジョルジュ・ペレック協会の手厚い協力を背景に成り立っているため、今後も緊密な関係を維持しつつ大いに活用する。今年度は博士論文の完成が課題となるため、指導教授とこれまで以上に密に意見交換を行いながら、研究を進めていく。
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