研究課題/領域番号 |
13J08594
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井上 紗綾子 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 緑泥石 / 蛇紋石-緑泥石混合層鉱物 / 蛇紋石 / 透過電子顕微鏡法 / 走査透過電子顕微鏡法 / X線回折 |
研究実績の概要 |
熱水系に産出するFeに富む緑泥石の積層構造の結晶構造をより詳細に高分解能透過電子顕微鏡法(HRTEM)観察で記載した。その結果、試料中では蛇紋石層(7Å層)との混合層構造に加えて、異なる極性を持つ7Å層(TO/OT)や異なるpolytypic groupに属する層が複雑に混在していることが明らかになった。さらに、続成作用により形成されたFeに富む緑泥石試料のHRTEM観察も行った。熱水系と同様に蛇紋石層との混合層構造がみられたが、蛇紋石層の割合は少なく、積層構造の不規則性の度合いも低い。これは続成作用により形成された試料は熱水変質により生成された試料に比べて低温で、ゆっくりと沈殿していたことに起因すると結果の比較から考えられる。蛇紋石-緑泥石混合層の各成分層は組成的構造的に類似しており、両者の積層構造を一つの記載法で表すという新しい方法を導入することにより積層構造の不規則度を比較することが可能となった。同じ組成範囲をもつが異なる機構、温度・圧力条件で形成された緑泥石の積層構造の不規則度合を比較することで積層構造と形成条件の関係の解明につながってくことが期待される。また、HRTEMで観察した試料を高角散乱環状暗視野走査TEM法(HAADF-STEM)で観察し、八面体(O)シート中のFeの分布を明らかにした。HAADF-STEM像のコントラストは平均原子番号に比例し、原子分布の解明に有効な手法であるが、これまで層状珪酸塩鉱物への応用例の報告は少ない。本研究ではほとんどFe端成分の化学組成を持つ緑泥石のHAADF-STEM観察に成功し、緑泥石中の2種類のOシートの内2:1層中のOシートをFeが優先的に占有していることが明らかとされた。Fe緑泥石の場合にX線回折や核磁気共鳴による陽イオン分布の解析は細粒であるため難しく、このようなFeの分布が観察できたことは非常に重要な知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
先行研究では検討されてこなかった積層構造の不規則度合をHRTEM観察により明らかにし、積層構造と形成条件の解明について新たな視点を示すことに成功したため。また、緑泥石のHAADF-STEM観察を始めて成功させたことにより、長らく解明されていなかったFeに富む緑泥石中のFeとAlの分布を解明することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
より広範囲の化学組成を持つ続成作用の試料のHRTEM観察を行い、形成条件と積層構造の関係を解明する。また、蛇紋石―緑泥石混合層構造のHAADF-STEM観察を行い両者の組成の違いを明らかとし、両者間の電荷のバランスを解明する。HRTEM、STEM観察の結果を参考にX線回折のシミュレーションを行い、微細な積層不整が統計的にどの程度寄与するのかを考察する。
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