研究課題/領域番号 |
13J08636
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研究機関 | 福井市立大学 |
研究代表者 |
岡村 嵩彦 福井市立大学, 生物資源学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 嫌気 / 微小鞭毛虫 / 細菌捕食 / Amoebozoa / Parabasalia / Stramenoiles |
研究概要 |
嫌気環境は普遍的に存在し、嫌気環境の生態系を明らかにすることは非常に重要である。嫌気環境の生態系に関する研究は、これまで細菌の働きに関するものが多く、真核生物に関する研究は遅れていた。これまでの研究で、嫌気環境には鞭毛を持った微小な真核生物(微小鞭毛虫)が存在し、それが細菌を捕食していることを明らかとした。嫌気環境の生態系の理解を深めるためにはこの微小鞭毛虫の働きを解明する必要がある。そこで本研究では、その生理・生態学的知見を得るために、水月湖の嫌気水塊より嫌気性微小鞭毛虫の分離とその生理学的性質の解明を目指した。 平成25年度は、水月湖の嫌気的な水塊より2株、底泥より1株の嫌気性微小鞭毛虫の分離培養に成功した。3株の18SrRNA遺伝子の系統学的解析を行った結果、3株はStramenopiles(嫌気水塊由来)、Amoebozoa(嫌気水塊由来)、Parabasalia(底泥由来)に属することが明らかとなった。このうち、Stramenopilesに属する株については微細構造を決定し、新属新種として現在記載するために論文を執筆中である。嫌気性の鞭毛虫に関する記載論文は少なく、貴重な知見であるといえる。 Stramenopilesに属する株は通性嫌気性、AmoebozoaおよびParabasaliaに属する2株は偏性嫌気性であった。このうち、Stramenopilesに属する株について、その細菌捕食と増殖速度の動力学的性質を明らかにすることに成功した。このような知見はこれまでに例がなく、鞭毛虫の嫌気環境下における生態の解明において重要な知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は3株の鞭毛虫の分離培養に成功し、そのうち1株にういてその詳細な生理学的性質を明らかにすることができた。これは研究計画で予定した内容と合致する。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度では鞭毛虫の分離培養とその生理について明らかにすることができた。26年度は得られた分離株の代謝メカニズムを明らかにすることを目的とする。分離株は発酵や水素発生型の嫌気的なエネルギー代謝を行っていることが考えられる。そこで考えられる代謝産物(水素・有機酸など)の有無を調べる手法と、関連する遺伝子の探索という二つの手法を用いることを予定している。
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