研究課題/領域番号 |
13J08705
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
平井 義晃 東京工業大学, 大学院理工学研究科(工学系), 特別研究員(DC2)
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キーワード | CIGS / 太陽電池 / デバイスシミュレーション / 分子線エピタキシー |
研究概要 |
本研究の目的は、Ga組成の高いCu(InGa)Se_2(CIGS)のバンドプロファイル制御による太陽電池特性の向上である。これを実現するため、最適バンドプロファイルの検討及びCIGS製膜方法の改善を実施した。 最適バンドプロファイルの検討は、デバイスシミュレーションソフト"wxAMPS"を用いて行った。その結果、変換効率25%を達成するためには、以下の方法が有効であるという知見を得た。 1. n型バッファ層/CIGS界面再結合を抑制するため、0.3eV以上の価電子帯オフセットを有し、かつCIGSと良質な界面を有するワイドギャップ層を挿入する。これにより、変換効率を22.1%まで向上させることが可能となる。 2. キャリア収集効率を増加させるため、CIGSの伝導帯を裏面から表面に向かって減少する単傾斜構造に制御する。これにより、変換効率を23.6%まで向上させることが可能となる。 3. CIGSバルク再結合を抑制するため、CIGSの欠陥密度を1/3に減少させる。これにより、変換効率を25.1%まで向上させることが可能となる。 これらの計算結果の意義は、CIGS太陽電池の高効率化に必要な条件を明らかにしたことである。この条件を実現することで、変換効率の向上が期待できる。 CIGS製膜法の改善については、Na含有高歪点ガラスを基板に用いることで、製膜温度の上昇を試みた。その結果、640℃の高温製膜により、Gaの拡散を促進させることに成功した。これが、CIGSの伝導帯制御における自由度の向上を実現し、3段階法を用いて単傾斜構造を有するCIGSの作製に成功した。これらの実験結果の意義は、上記の計算結果で得られた高効率化に必要な条件を満たすことにある。現在、上記2の単傾斜構造はすでに実現しているe今後、実験条件の最適化により、上記3のCIGSの欠陥密度低減も実現可能であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
デバイスシミュレーションによる解析により、当初予想していなかった高効率化のための条件が明らかになった。これにより、変換効率25%を実現するための条件を明示することができた。さらに、この条件の一部を製膜方法の改善により実現することができた。
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今後の研究の推進方策 |
デバイスシミュレーションにより、明らかになった高効率化のための条件である、「n型バッファ層/CIGS界面再結合を抑制するため、0.3eV以上の価電子帯オフセットを有し、かつCIGSと良質な界面を有するワイドギャップ層の挿入」を実現する。条件を満たす材料として、CIGSの異相であるOVCやII-VI族の化合物半導体に着目し、検討を行う。また、着目した材料について製膜法を確立し、実デバイスに応用することで、変換効率の向上を試みる。
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