研究課題/領域番号 |
13J08706
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
新谷 春乃 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | カンボジア / 歴史認識 / アイデンティティ / 現代史 |
研究実績の概要 |
本年度は三度のカンボジア調査の中で文献資料収集、インタビュー調査を実施した。研究成果として、主にポル・ポト体制が崩壊した1979年以降の「カンボジア史」構築の試みを論文や口頭発表で報告した。 研究論文は、2000年代末以降の人民党政権による歴史認識の政治利用に関して、昨年度開催した上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科2013年度大学院生・次世代研究者によるワークショップ・シンポジウムシリーズ第1回シンポジウムの「一党支配体制下の政治制度、歴史認識、社会統制―2013年カンボジア総選挙にみる人民党の体制維持戦略」の研究報告を下地として、研究論文を執筆した。同論文の中で、シハヌーク元国王をカンボジア現代史上の「偉大な指導者」として記憶する動きの加速と、そのシハヌークと同等の存在としてフン・セン首相を位置づける現代史観が教科書や選挙のキャンペーン活動、モニュメント建設を通して行われてきたことを指摘した。口頭発表では、国定教科書、学習指導要領、官報等と当時の関係者へのインタビューデータの分析を行い、ポル・ポト体制崩壊後の1980年代の「カンボジア史」構築の試みについて、東南アジア学会九州例会で報告した。 現在、主に歴史教科書を対象とした収集資料の分析を継続しているが、それ以外に以下の二点を検証中である。第一に、政府によって構築された「カンボジア史」が当時のカンボジア社会でどのように教えられたのかという点である。この点に関しては、当時の学校関係者へのインタビュー調査を継続している。第二に、時代ごとにどのような歴史モニュメントが建設されたかという点に関してであり、公文書館や情報省資料室での資料収集と文化芸術省関係者へのインタビュー調査を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、研究論文の投稿を行い、一定の研究成果をまとめることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は研究論文の発表、国内外の学会での口頭発表を検討している。同時に、博士論文執筆が当初の計画よりも遅れているため、次年度にリサーチコロキアムを実施し、早期の完成を目指す。
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