研究課題/領域番号 |
13J08718
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
渡邉 恵 東京工業大学, 大学院情報理工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | 氷河質量変化 / 降水量 / 衛星レーダ / 雨量計 / IPCC第5次評価報告書 / 氷河融解 / 流出量 / 氷河モデル |
研究概要 |
本研究では以下の3点を明らかにすることを目的としている。 1. 山岳氷河の質量収支に様々な見解をもたらす要因の解明。 2. 過去数十年および将来の山岳氷河質量変化、および融解量の正しい算定。 3.2. によって推定された氷河質量変化にともなう持続的な水利用の将来展望。 平成25年度はこの内、主に1.2.を明らかにするため、アジア高山域の一部地域において、氷河質量変化の推定に必要とされる日降水量データの空間分布の改良に取り組んだ。これまで、既存の数十年の期間を持つ日降水量データセットでは、0.5°×0.5°もしくは0.25°×0.25°程だった空間分解能を約0.05°×0.05°へ改良した。衛星観測と雨量計観測の各々の利点を生かすことにより、雨量計の設置数の少ない山岳地域にも適用を可能とし、かつ高空間間分解能を実現した。使用する衛星データと雨量計データは、様々な検討を行った結果、衛星データとして、熱帯降雨観測衛星(TRMM)に搭載された降雨レーダ(PR)のVer, 7の標準プロダクトの2A25、雨量計データとしてGHCN-Dailyを用いた。TRMMは降雨と降雪の検出に対する観測誤差が異なるが、これまでTRMMを利用した選考研究では、考慮された例は多くない。本研究では、降雨と降雪の2種類の場合に対して補正係数を決定し、降水形態を考慮した補正を行った。研究課題に関連する論文が平成25年度内に出版されたため、計画を変更し、暫定的に2.と3.にも取り組んだ。現時点では、アジア高山域を起源とする11大流域において、将来の氷河変動と氷河融解が流出量に与える影響の推定を行った。IPCC第5次評価報告書に即した最新の気候モデルと最新の氷河モデルを用い、2100年までの氷河融解量と流出量のシミュレーションを行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3点ある目的の内、1点目に重点的に取り組み、残りの2点にも暫定的に取り組むことができたため。また、目的達成のために不可欠となるデータが不足し、年度途中で計画を変更した。
|
今後の研究の推進方策 |
交付申請書に記載した高精度の降水量データの作成に関して、一部空間分解能の改善に成功したものの、対象地域の雨量計観測値の絶対的不足から、更なる改良には困難を極めている。したがって、今後、直近では、アジア高山域を起源とする大河川流域での将来の氷河融解が流出量へ及ぼす影響の推定を継続する。将来推定に使用する気候モデルには複数の種類があり、今後は気候モデル間の違いなどを明らかにする意向である。また、2100年以降のシミュレーションにも取り組みたい。
|