研究課題/領域番号 |
13J08718
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
渡辺 恵 東京工業大学, 情報理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 気候変化 / 氷河融解 / 21世紀 / 河川流出量 |
研究実績の概要 |
将来の氷河変動と氷河融解が流出量に与える影響の推定を行い、結果を査読付雑誌へ投稿した。以下は該当の論文の内容について記す。対象は、IPCC第4次報告書など各種報告書で氷河縮小による水資源枯渇のホットスポットになることが懸念され、かつ他の氷河地域に比べ未解明な部分が多く残されているアジア地域の11大流域とした。これらの各対象流域についてIPCC第5次評価報告書に即した最新の気候モデルと最新の氷河モデルを用い、2100年までの氷河融解量と流出量のシミュレーションを行った。アジアの氷河地域において広域的水資源への氷河融解の影響を評価する場合に、これまではいくつかの支流域での研究結果などに基づいて全体を推察することが多かった。しかしこの論文では、他の研究機関の発表する最新のいくつかの成果に加え、広域的かつ流域全体での統一的な評価を行うための一助となる情報を示すことができた。またシミュレーションの結果、氷河融解の進行度合いにはいくつかのタイプが存在することが示唆された。気候変化による氷河融解の進行過程は地域などによって異なることが先行研究により徐々に明らかとなってきたが、その要因は未解明であり、現在最もチャレンジングであり注目を集めているトピックの一つである。現在要因解明のため、氷河モデルを用いた将来の長期シミュレーションや気候モデルの出力値解析、氷河融解の感度実験などを行っている。今後はそれらの結果をもとに、アジアもしくはより広域を対象として氷河融解の進行に影響をもたらす要因の一般化を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数の研究目的について横断的に研究を進め、最終目的である将来の水利用の展望について暫定的な結論を導き出すことができたため。各種学会発表(4件)やその受賞(1件)、査読付論文の出版(1件)などから客観的にも研究成果を評価されていることがわかる。 また、研究課題に関連した知識や技術は日々発展しているが、それらの最新の研究結果にも常にアンテナを張り、適宜計画を修正したり、自己の研究に取り入れたりすることで柔軟に対応している。計画微修正後の課題についても成果をとりまとめた査読付出版に向けて執筆中であり順調に進捗していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度行った将来の氷河融解が流出量に与える影響評価のさらなる発展研究として、季節毎の流出量への氷河融解の影響を定量化、22世紀以降の継続的なシミュレーションや、マルチモデル、マルチシナリオを用いることなどに今後取り組む予定である。 研究課題の一部である氷河融解が流出量に与える影響に関する論文が出版され、該当論文の結果が主要な見解となったり、氷河の不均一な気候変化への応答について徐々に注目を集めるようになったりしたため、研究計画をやや軌道修正し、氷河の気候変化への応答とその要因について目下解明に取り組んでいる。 また、氷河モデルの改良や、氷河モデルの相互比較などを行うことも視野に入れており、質量収支の算定結果の精度を高めることなどを計画している。氷河モデルの改良としては、再解析データや衛星データなどを用いることにより、これまで多くの氷河モデルにおいて課題として残されてきたエネルギーフラックスを取り込むためのモデル改良を計画中である。
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