研究課題/領域番号 |
13J08747
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西口 雄基 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 抑うつ / 注意 / 感情刺激 / 不安 |
研究実績の概要 |
26年度の研究では研究実施計画に従い、抑うつ的な個人における注意バイアスの測定を行った。25年度の結果から予想されていた結果とは異なり、悲しみ顔刺激を長期間呈示した際に、抑うつではなく不安の高い個人において注意の焦点が小さくなるという結果が見られた。また、悲しみ刺激呈示後にトップダウンな操作を行わせた場合に高抑うつ群において注意のズーム・アウトが困難になり、悲しみ顔呈示位置に注意が集中してしまうという予想を元に実験を行ったが、ここでも抑うつの影響を観察することはできなかった。そこで、追加実験を行い抑うつの効果を観察した。追加実験ではポジティブ画像を中央に呈示した。抑うつ的な個人はポジティブな画像への注意を避けたり、低抑うつ群で見られるポジティブバイアスが見られないという事が報告されている。そのため、中央にポジティブ画像を呈示するDigit-parity課題を課した場合にはむしろ注意の範囲が広くなり、遠距離の刺激に対する反応が早くなることが予測された。26年度にはこの追実験を行い、おおむね予想通りポジティブ刺激呈示時には中立刺激呈示時よりも高抑うつにおいて遠距離のターゲットへの反応が早くなることを観察した。これは意外な結果ではあるが、注意焦点の範囲について検証した場合にはネガティブ刺激よりむしろポジティブ刺激が抑うつと深くかかわっていることが分かった。これまでの抑うつ的注意バイアス修正の試みでは、ネガティブ刺激への注意を低減させるものが主に用いられてきたが、この結果からポジティブ刺激への注意を増加させるような操作も必要である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
26年度の研究では、研究計画に沿って十分な量のデータを収集することが出来た。得られた結果も予測と異なる部分があったものの、非常に新規性の高いものであり、今後大きなインパクトのある発表が可能であると考えられる。また、得られた結果について、26年度には国際学会、国内学会及び4件の招待講演で発表しており、未だに国内では用いられたことがない最新の実験法を広く他の研究者に伝えることが出来た。さらに、予測と異なる結果について詳細な検証を行うために追加実験を考案し、行う事も出来た。追加実験は27年度の研究につながるものであり、27年度の研究も予定以上にスムーズに行うことが出来ると考えられる。これらを踏まえて、26年度には当初の予定以上に研究の進展が見られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は昨年度に引き続き、実験研究によって抑うつ的な個人における注意バイアスについて検証する。昨年度の研究では抑うつ的な個人において、ポジティブ刺激呈示時に注意の範囲が広くなるという現象が見られた。当初から本年度には抑うつを低減させるための注意トレーニングの開発を行う予定だったが、この結果を踏まえ、ポジティブ刺激への注意に関しても検証を行う必要がある。 そこで、本年度はまずポジティブ刺激への注意について、確認的な実験を行う。50~100名程度の参加者を対象に実験室において認知実験を行う。参加者には参加時間に応じて実験者金を支払う。次に、60名程度を対象にした実験研究により、トレーニング課題の開発を行う。この実験では実験室での注意バイアス測定のほか、自宅でのトレーニングを予定している。自宅でのトレーニングようにノートパソコンを購入し、参加者に貸与する予定である。参加者には参加時間に応じて謝金を支払う。 これらの実験で得られた成果は、ACBTC、iHope、日本心理学会等の国内外の学会で発表する。また、Journal of Behavior Therapy and Experimental Psychiatry 誌への投稿を予定している。投稿前には英文校閲を通す予定である。
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