本研究の目的は、培養神経回路を一細胞単位の高解像度で設計・構築するためのマイクロデバイスの構築である。デバイスは、一細胞サイズの培養皿(マイクロプレートと呼ぶ)をガラス基板上に大量にアレイ化したものであり、マイクロ加工技術により製作した。マイクロプレートデバイスの上で神経細胞を培養することによって、(1)一細胞ごとに形態(細胞体・軸索・樹状突起)を制御しながら培養ができること、(2)形態を制御した単一神経細胞を自在に再配置することで神経回路を設計・構築できること、の2点を実現する。 本年度はマイクロプレートの形状によって細胞体・軸索・樹状突起を制御した単一神経細胞を培養し、それを再配置することで神経回路が構築可能であるかどうかを調べた。マイクロプレートの形状を円状の細胞体部、線状の軸索部・樹状突起部の3つを結合したものとし、ラット胎児の初代培養海馬神経細胞をデバイスに播種すると、マイクロプレート・アレイに形態制御された単一神経細胞が得られ、それを1週間以上培養可能であることがわかった。 また、形態を制御した単一神経細胞が載ったマイクロプレートを、マイクロマニピュレータによって再配置して神経回路を構築することができるかを調べた。マイクロマニピュレーションによって単一神経細胞を隣接配置させ培養すると、神経細胞同士が成長してお互いに接触することがわかった。神経回路の機能的な接続点であるシナプス結合が形成されるかを調べるために、免疫染色による形態面の評価、カルシウムイメージングによる機能面の評価を行ったところ、形態的にも機能的にもシナプス結合が形成されていることが示唆された。 以上により、本研究の目的である、単一神経細胞の形態制御・再配置を実現するデバイスを構築でき、それが一細胞単位の高解像度で神経回路を設計・構築するために利用可能であることを示した。
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