研究概要 |
交流直接形電力変換器は従来の電力変換器と比較して, エネルギー蓄積要素を必要としないため、小型化、高効率化が期待できる。しかし, 交流直接形電力変換器が普及されていない。この原因の一つは, 交流直接形電力変換器の有用性が定量的に示されていないことである。具体的には, 用途によって電力変換器に要求される性能(効率、サイズ、制御性能、コスト等)が異なる。しかし、これらの要求に対して従来システムと交流直接形電力変換器は定量的に評価されていない。そこでまず, 交流直接形電力変換器(マトリックスコンバータ)および従来システム(BTBシステム)における各損失を定式化し, 実験べースで損失式の妥当性を確認した。これにより, これまでシミュレーションで解析していた損失を机上計算することができるため, シミュレーション時間の短縮とシミュレータによる開発コストを削減することができる。また, 定式化した損失式を用い、小型化の観点から最大パワー密度設計および部品選定を行った。その結果、実験べースで試作したマトリックスコンバータの基本的な動作と最大パワー密度設計の妥当性を確認した。この成果により, 容易にマトリックスコンバータをより高パワー密度化することが可能となり, さらなる省エネルギー, 省スペース化が求められる近年において, マトリックスコンバータの用途拡大が期待できる。さらに, 莫大な節電効果となることや、有限資源への依存度が小さくなることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新しい直流連系可能な回路を検討したが, サイズを計算したところ, 大型化することが判明した。したがって, 構成から検討し直す必要があるため, 工程が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、直流連系可能な回路の検討において, 研究計画を変更し、動作解析を実験べースで行う。以前検討した構成は, 受動素子の大型化が問題となったため, 高周波化を図ることで, 上記の問題を解決する予定である。 次に, イニシャルコストとランニングコストを計算することで、提案システムはコストの面でも有利であることを証明する。最後に、用途毎に要求される仕様に対して、適した変換方式を選択する方法を定量的に検討する予定である。具体的には、HEV、ビル設備、新エネルギーの系統連系の用途について検討する。以上の内容をまとめ, 博士論文を執筆する。
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