研究概要 |
本年度は生体内硬さ環境をインビトロ構築し、細胞応答の定量評価ができる実験システムの開発を行った。生体内硬さ環境のモデル化のためには接着分子密度と硬さが厳密制御できるポリアクリルゲルを用いた。また細胞応答の定量評価するために、干渉を用いた新規顕微鏡法の開発を行った。これまで細胞―ハイドロゲル界面の可視化するために全反射蛍光顕微鏡(TIRF)などが一般的に用いられてきた。しかしZ方向分解能が500nmと細胞の接着タンパク質(数十nm)よりも大きく、その定量計測が困難であった。またガラス基板上で数nmのZ方向分解能を持つ反射干渉顕微鏡法(RICM)は、基板/培養液界面の反射光を利用しているため、ハイドロゲル/培養液界面の低反射率が原因となり測定が困難であった。そこで申請者らは、RICMに対して共焦点顕微鏡及びハイスループット光学系を導入し、入射光強度を向上させるだけでなく、散乱光を低減させ、細胞-ハイドロゲル界面の可視化に成功した。またゲルの硬さに応答するがん細胞の接着面の定量評価にも成功した(T. Matsuzaki et. al., J. Phys. Chem. lett., 2014.)。 これらを組み合わせることで、生体内の脳から軟骨までの硬さ環境をインビトロでモデル化し、硬さに応答する細胞の定量評価が行える実験システムの構築に成功した。今後は本実験システムを用いて硬さが関与する様々な疾病のモデルをインビトロ構築し、そのメカニズムの定量解明を行っていく。 また共同研究の一つとして横浜市立大学武部貴則准教授らが作製した再生軟骨の硬さを測定し、実際の生体内の硬さと同等であることを見出した(M. Mizuno, T. Matsuzaki, T. Takebe et. al., Stem Cells. 2014.)。
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