研究実績の概要 |
平成26年度は研究計画に予定していた通り、埼玉県立がんセンター菅沼雅美博士との共同研究を実施した。近年、緑茶カテキンにがん細胞を硬化させる作用があることが発見され、これまで知られてきた緑茶カテキンの分子生物学的ながん再発予防作用とは異なったメカニズムとして注目を浴びている(Suganuma et al.,J.CancerRes. Clin.Oncol.2012)。しかし緑茶カテキンが細胞の何を硬化させているかというメカニズムについては未解明な点が多い。そこで申請者は緑茶カテキンとがん細胞の反応場である細胞膜に着目し、柔軟な細胞膜のモデル(ベシクル)の作成と緑茶カテキンを作用させた時の膜弾性の非接触・非侵襲測定システムの構築に挑んだ。その結果、緑茶カテキンが膜の揺らぎを抑制し、膜弾性を約10倍以上硬化さていることが明らかになった。本結果は緑茶カテキンによる膜の硬化作用ががん細胞の転移抑制メカニズムと密接に関係していることを示唆している。以上の結果は国際学会発表予定であり(The 2015 international chemical congress of pacific basin societies (Pacifichem)2015)、論文投稿中である。 また、昨年度に引き続いて横浜市立大学 医学部 武部貴則 准教授との共同研究も実施した。その結果、細胞の足場の硬さを制御することで、肝臓原基(臓器の芽)を高効率に誘導することに成功した(T. Takebe, T. Matsuzaki, H. Y. Yoshikawa et al., Cell Stem Cell 2015.雑誌表紙に選出)。また著書(松崎賢寿、吉川洋史、三次元ティッシュエンジニアリング、第1編 第1章 第2節 2015.)も執筆しており、研究はおおむね順調に進展した。
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