研究課題/領域番号 |
13J08861
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉池 智史 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 分子雲 / ガンマ線 / サブミリ波 / 宇宙線加速 / 超新星残骸 / 水素原子 |
研究概要 |
本研究の目的は、銀河系内の宇宙線の加速起原として有力である超新星残骸(SNR)での宇宙線陽子加速を観測的に検証・特定し、さらにSNRの進化と宇宙線陽子加速の描像を解明することである。そのために、ガンマ線が検出されている複数の年齢数万年のSNRに対し、星間陽子とガンマ線分布の比較解析を適用する。初年度である平成25年度では下記のことを遂行した。 1. SNRW44について、NANTEN2望遠鏡による12CO (J=2-1)、12CO (J=1-O)輝線を用いた分子ガス観測データを解析したところ、2輝線の強度比(12CO (J=2-1)/12CO (J=1-O))が高い分子ガスの詳細分布を特定した。これは衝撃波と相互作用したガスであり、且つこの分布がガンマ線分布と良い対応があることを明らかにした。水素原子(HI)ガスのデータも合わせることで、W44に付随する星間陽子を特定し、W44での宇宙線陽子加速を指示する結果を得た。この結果についてまとめた論文がThe Astrophysical Journalに掲載された。 2. SNR IC443について、W44と同様にNANTEN2望遠鏡による12CO (J=2-1)、12CO (J=1-0)輝線を用いた分子ガス観測データを解析した。その結果、W44と同様に強度比(12CO (J=2-1)/12CO (J=1-0))が高い分子ガスが存在し、このガスとガンマ線分布に良い対応があることを発見した。これはIC443での宇宙線陽子加速を指示する結果である。 3. W44、IC443に加え、同様の年齢が数万年程度のSNR W51Cについて、加速された宇宙線陽子の全エネルギーを計算したところ、総じて1%程度の加速効率であり、年齢数千年程度のSNRより効率が良いことを見出した。 4. SNRW41について、野辺山45m電波望遠鏡を用いた分子雲の詳細観測を行い、衝撃波と相互作用した可能性のある広い速度幅を持つガスを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二つのSNRについて、星間陽子とガンマ線の比較が終わり、宇宙線陽子加速を指示する結果が得られている。他のSNRについてもNANTEN2望遠鏡をはじめとする電波望遠鏡による星間ガスの観測がほぼ終わっており、順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
この研究では衝撃波と相互作用したガスを抽出するために12CO (J=2-1)と12CO (J=1-0)の2輝線が必要となる。特に12CO (J=2-1)輝線観測については一部のSNRについて未観測であるため、まずは残りの12CO (J=2-1)観測を実施する。データをすべて揃えた上で、星間ガスとガンマ線の分布を比較し、複数のSNRでの宇宙線陽子加速を検証。さらに、そこでの宇宙線加速効率を調べ、SNRの年齢との加速効率の変化を調べる。
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