研究実績の概要 |
前年度は、申請書年次計画に記した中で、人工タンパク質の効率的な細胞内導入法の開発に重点をおき、カルシウムイオン依存性タンパク質であるカルモジュリンに由来するペプチドを用いてリポソームを修飾することを目的に研究を行った。カルモジュリンは4つのヘリックスループヘリックス(HLH)モチーフを持つ細胞内タンパク質である。カルモジュリンとカルモジュリン結合ペプチドが特異的に結合することがよく知られているが、N末端から3番目と4番目のモチーフであるHLH3とHLH4自体がヘテロダイマーを形成する可能性も示唆されている。しかし、その詳細は不明な点が多い。そこで本研究では、まずこのペプチドの相互作用について調べるために実験を行った。それぞれのペプチドにシステインを付加したHLH3-GC、HLH4-GCをFmoc固相合成法により調製した。このペプチドをレドックスバッファー中で反応させ、酸化体(ダイマー)と還元体(モノマー)の生成比率を比較したところ、カルシウムイオン存在化でヘテロダイマーのみが極めて特異的に生成することが確認された。次に、このHLH3とHLH4のN末端に、スペーサーであるPEG12、そして脂質であるコレステロールを結合させたChPHLH3,ChPHLH4を調製した。膜との親和性が高いコレステロールによりペプチドが膜に挿入され、リポソーム表面に提示されることが期待できる。このペプチドを用いてlipid mixing assayを行い、リポソーム間の融合効率を調べた。片方のリポソームを2種類の蛍光分子で標識し、もう片方のリポソームと混合すると、融合が起こった時のみ2つの蛍光分子間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が解消される。このアッセイにより、ChPHLH3,ChPHLH4で修飾したリポソームがペプチドを加えていないリポソームに比べてカルシウムイオン存在化でより高い融合効率を示すことが示唆された。
|