研究課題/領域番号 |
13J08894
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
小田 泰昭 島根大学, 医学部附属病院, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 低フォスファターゼ症 / 間葉系幹細胞 / iPS細胞 / 再生医療 |
研究実績の概要 |
本年度は、基礎研究と臨床応用研究へ向けた基盤整備を中心に行った。基礎研究側では、低フォスファターゼ症の原因遺伝子であるALPL遺伝子を患者の細胞内で正常な配列に置き換えるために、遺伝子編集技術に注力して研究を行った。 遺伝子編集技術で最近特に注目されているCRISPR/Cas9のベクターをAddgeneから購入し、低フォスファターゼ症の患者の遺伝子変異部位を切断するCRISPR/Cas9ベクターを作製して、健常者のiPS細胞に導入した。通常、健常者のiPS細胞は高いALP活性を有するためALP染色により染色されるが、患者の遺伝子変異部位を切断するよう設計したCRISPR/Cas9ベクターを導入した健常者のiPS細胞は、患者のiPS細胞と同様に、ALP活性を失うことを確認した。さらに、遺伝子配列の解析により、ALP遺伝子の目的の部位(患者での変異部位)を切断していることを確認した。一方、低フォスファターゼ症のモデルマウスも導入し、現在飼育している。来年度は遺伝子修復した患者細胞をモデルマウスへ移植し、モデルマウスの予後の改善が認められるかを検証する。 島根大学医学部附属病院では、ヒト臨床レベルの細胞調製に必要な高レベル無菌環境を実現するCell Processing Work Station (CPWS)を有している。本研究計画の臨床応用の準備段階として、CPWSを用いたヒト骨髄液からの間葉系幹細胞の培養を行うとともに、標準作業手順書や「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に即した各種申請書類等の作成を行った。来年度は、標準作業手順書に基づいた間葉系幹細胞の培養を行い、臨床研究に合致した手順書となるようブラッシュアップを行う。また、CPWS内での全作業工程を管理する工程管理システムを導入し、GMPに準拠したヒト細胞調製の基盤を確立する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の当初は、低フォスファターゼ症の患者iPS細胞の作製と、iPS細胞からの間葉系幹細胞の作製、ならびにモデル動物への移植を行い、低フォスファターゼ症の治療モデルを確立することを計画していた。患者iPS細胞の作製と間葉系幹細胞への分化誘導は既に達成しており、現在、論文投稿準備中である。モデル動物への移植については、当初はモデルラットを作製して解析する計画であったが、所属施設の飼育環境や設備を考慮して、ALPモデルマウスを用いることとした。ALPモデルマウスは既に導入済みで、現在は繁殖や移植に関する準備を行っている。当初計画には盛り込まれていなかったが、申請者のこれまでの研究経歴や経験を活かし、島根大学医学部附属病院で保有するヒト臨床用細胞調製システム(CPWS)の運用と管理について、中心的な役割を果たしている。本研究計画をスムーズに臨床応用へと繋げられるよう、各種申請書類や手順書作成などの基盤整備を行っている。研究の進捗は概ね順調に進展しており、来年度はより一層発展させたい。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、遺伝子修復した患者細胞をモデルマウスへ移植し、モデルマウスの予後の改善が認められるかを検証する。また、臨床研究の準備段階として、ヒト臨床用細胞調製システム(CPWS)を標準作業手順書に基づき運用し、間葉系幹細胞の培養を行うとともに、臨床研究に合致した手順書となるようブラッシュアップを行う。さらに、CPWS内での全作業工程を管理する工程管理システムを導入し、GMPに準拠したヒト細胞調製の基盤を確立する。
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