ヒトを対象として細胞移植医療を行う場合、間葉系幹細胞あるいはヒトiPS細胞などの樹立・培養・分化誘導を実験室レベルではなく、高レベルの無菌環境下で作業を行う必要がある。島根大学医学部附属病院では、ヒト臨床研究用の細胞調製に必要な高レベル無菌環境を実現する「閉鎖型細胞調製システム(Cell Processing Work Station)」を保有している。昨年度に引き続き、本システムを用いてヒト骨髄液からの間葉系幹細胞の培養を行うとともに、培養手順等を定めた「標準作業手順書」の改訂を行い、より安定的かつ再現性の高い手順書を作成した。昨年度に施行された、【再生医療等の安全性の確保等に関する法律】により、細胞移植等を含めた再生医療を行う場合には、「特定細胞加工物製造届書」の届出が必要となる。そこで、関係者と協議を行って製造管理・衛生管理・品質管理体制の基盤となる書類を作成し、所轄となる中国四国厚生局へ届出書を申請し受理された。また、本学および本学医学部付属病院では、これまで再生医療を専門として行う組織や部署が存在しなかったため、上述の施設運用を行うための「島根大学医学部附属病院再生医療センター」が2016年1月1日付で発足した。 低フォスファターゼ症のモデルマウスを、共同研究機関より分与して頂き、島根大学の動物実験施設へと導入した。しかし、不運なことに病原菌に感染していることが判明したため、学外の施設に業務委託して清浄化作業を行って頂き、清浄化されたマウスを再搬送して頂き繁殖を行った。近日中に、細胞移植による治療効果を検証する予定である。低フォスファターゼ症患者iPS細胞を用いた病態再現と治療技術開発についても同時に進めており、患者iPS細胞からの神経幹細胞の作製、ならびに神経細胞の作製も行った。患者iPS細胞から作製した間葉系幹細胞も、上記のモデルマウスに移植する計画である。
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