研究課題/領域番号 |
13J08901
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
浅場 明莉 麻布大学, 獣医学部, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 超音波音声 / 感覚統合 / 前頭前皮質 / 性フェロモン / マウス / 性行動 / 音声コミュニケーション / キスペプチン |
研究実績の概要 |
雄マウスは雌マウスに出会うと、歌構造をもつ超音波音声を発するが、雌マウスにおける雄の歌の受容と伝達に関わる神経回路と繁殖制御機構に対する効果は明らかにされていない。これまでの研究では、雌マウスは雄の嗅覚刺激が存在している際に、異系統雄の歌へ嗜好性を示すことを明らかにしてきた。そこで、本研究では、雄マウスの求愛歌が雌の生殖機能を活性化するメカニズムを、嗅覚との感覚統合神経回路も含めて明らかにすることを目的とし、行動解析及び内分泌、神経活動の変化を調査している。 「雄の歌が雌の繁殖機能に及ぼす効果の調査」:性行動時における雄の歌の役割を調べるために、無声化処置を施した雄を作出し、偽処置の雄と比較して、雌の性行動が変化するかを調べた。その結果、偽処置雄提示群の雌は、無声化処置雄提示群の雌に比べて、雄への接近回数やその持続時間が有意に多くなった。このことから、雄の歌は雌の接近行動を誘起している可能性が考えられた。 「求愛歌と雄フェロモンの統合神経核の同定」:雄フェロモンの存在下で、歌、あるいはノイズを提示された雌の脳内神経活動を観察した。in situ ハイブリダイゼーション法を用いて、前初期遺伝子であるc-fosを指標に脳全体を解析した結果、歌とフェロモンの共提示によって、前頭前皮質内側部が特異的に活性化していることがわかった。前辺縁皮質は感覚統合や意思決定に関連していることから、雌マウスは雄の嗅覚情報と聴覚情報を統合することで嗜好性を示すことが示唆された。 これらの発見は、生物の繁殖に重要な雌雄間コミュニケーションを支える感覚統合と意思決定の神経基盤を理解する上で、重要な一歩となると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in situハイブリダイゼーションを用いたc-fosの全脳マッピングにより、歌とフェロモンを提示された雌マウスの脳における反応を網羅的に解析し、前頭前皮質内側部が特異的に活性化していることがわかった。これにより、嗅覚-聴覚情報の統合部位も絞りこむことができ、おおむね順調に進展していると考えている。歌による生殖内分泌中枢の活性化については、神経活動の指標としてpCREB(リン酸化cAMP応答配列結合タンパク)を用いて視床下部のKisspeptin神経細胞の活性を二重免疫染色化学により解析することが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、前辺縁皮質を中心にさらに解析を進め、神経活性特異的に人工的な抑制性Gタンパク受容体を発現させることでその神経活性を抑制できるDREADDs-Gi c-fos Tgマウスを駆使して人為的に抑制し、歌嗜好性が消失するのかを実証実験する。視床下部の生殖内分泌中枢については、歌と雄フェロモンの提示によりKisspeptin神経細胞の高い活性傾向が見られているため、例数を追加し検討していく。平行して、歌提示により雌のエストラジオールや黄体刺激ホルモンなどの性ホルモンの分泌が促進されるか調査する予定である。
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