研究課題/領域番号 |
13J08912
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森 正樹 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 抑うつ / 反芻 / 省察 / 問題解決 |
研究概要 |
研究1不適応的な自己注目である反芻が抑うつを増加させる背景のひとつとして、反芻が問題解決能力を低下させることで結果的に抑うつが増加してしまうと考えられている。一方、適応的な自己注目と考えられている省察は問題解決能力の向上に寄与しうることが示唆されているが、まだ確かめられていない。そこで反芻・省察それぞれ問題解決能力の自己評価とどのように関連するかを検討した。縦断調査により、反芻は問題解決能力の自己評価の低さを予測し、省察は問題解決能力の自己評価の高さを予測することが明らかとなった。 研究2反芻・省察が問題解決能力の自己評価だけでなく、実際の問題解決のパフォーマンスに影響を与えているかどうかを検討した。問題解決のパフォーマンスを客観的に測定するために、実験室実験を実施した。この実験の結果、省察は問題解決行動の増加を通じて問題解決のパフォーマンスに寄与することが確かめられた。一方、反芻は仮説に反して問題解決行動や問題解決のパフォーマンスに影響を与えていなかった。 研究3ここまでの研究で省察が問題解決能力の自己評価および実際のパフォーマンスに影響を与えていることが明らかとなった。これは省察が適応的な自己注目であることを示す結果だが、具体的に省察がどのような自己注目なのか明らかになっていない。研究3では省察がどのような性質を持つ自己注目なのか、反芻と対比することで検討した。反芻の特徴の一つに、自分の感情体験に没入しやすい、というものがある。省察は反芻とは反対に、自分の感情体験に没入しすぎない自己注目であることが考えられる。そこで、自分の感情や思考から距離を置いた状態である脱中心化状態を測定する質問紙を用い、反芻・省察との関連を検討した。二時点の縦断調査の結果、仮説通り、反芻は脱中心化状態の低さを予測し、省察は脱中心化状態の高さを予測した。ここから、省察は反芻とは対照的に脱中心化状態を導く自己注目であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究1, 研究2において計画通りに反芻・省察と問題解決の関係性を実証できた。さらに研究3では, 省察が具体的にどのような自己注目であるのかを検討するために, 脱中心化状態との関連を示した。この結果は省察の具体的な内容の解明に示唆を与えるものであり、今後の介入研究につながる基礎的ながら重要な知見である。以上のことから, 当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は省察がどのような自己注目であるかをさらに詳細に検討し、介入研究を行っていく。平成25年度の研究3において省察と脱中心化との関わりが明らかとなった。これを手がかりとして, マインドフルネスやself-distancingなど省察と関連があると考えられる変数との関連を検討し, 介入研究に適用しやすい形で省察とは何かを明らかにしていく。その後は省察が実際に誘導できることを確認し, 省察を増加させる介入法を開発する。その介入法が問題解決能力の向上に寄与し, 抑うつの低減に貢献することを確かめる。
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