研究実績の概要 |
本研究の目的はイスラームの地域性・時代性を捉えるために、14世紀エジプトにおけるムスリムの宗教実践を、古代エジプトに遡るエジプト人の習俗やキリスト教徒の宗教実践の影響、ムスリム法学者によるこれら習俗の容認といった視点から考察することにある。本年度は、研究課題のうち、「ムスリムの信仰生活における、古代エジプトの習俗やキリスト教徒の宗教実践の影響」に取り組んだ。 主な活動は以下のとおりである:1. 研究報告:今年度は様々な分野の研究会にて計4本の研究報告を行い、またシンポジウムにおけるコメンテーターを1件つとめた。2. 海外研究者招聘:9月には、京都にて開催されたシンポジウムのために来日した研究者を東京大学へ招聘し、セミナーを開催した。Chrysi Kotsifou (Van Leer Jerusalem Institute,Israel), “Life in a 10th-century Egyptian Monastery and the Scribal Practices at the Monastery of St. John the Little,” 東文研セミナー、於東京大学東洋文化研究所、2014年9月8日。ビザンツ史、東方キリスト教史、イスラーム史、美術史と様々な時代や地域、分野の研究者の参加があり、活発な議論が交わされた。 得られた成果について:今年度は専門分野から少し離れ、西洋史やアフリカ史、考古学といった様々な分野の研究会にて報告を行い、他分野の研究者との対話や交流を深めた。報告準備や報告後のディスカッションを通じて、従来のイスラーム史研究においては単なる土着信仰として捉えられがちであった、古代エジプトにおける民間信仰や、イスラーム期以降のエジプトにおけるキリスト教文化について考察を深められた。
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