γセクレターゼはプレセニリン(PS1またはPS2)、ニカストリン(NCT)、Aph1(Aph1-aL、-aS、または-b)、Pen2の4つから構成される複合体である。アルツハイマー病の原因とされるアミロイドβ(Aβ)はγセクレターゼによって前駆体タンパク質(APP)から産生される。またγセクレターゼはNotch受容体を切断することによって、細胞の分化・発生など細胞の運命決定に重要な役割を果たすNotchシグナリングも制御している。従って、Aβ産生抑制を目的としたγセクレターゼ阻害剤はNotchシグナリング阻害による副作用をも引き起こすことが知られている。 私は、PSとAph1の組み合わせの違いによって生じる6つの異なるγセクレターゼを酵母に発現させ、レポーターアッセイによってAPPとNotchに対する切断活性を調べた。その結果、PS2/Aph1bのγセクレターゼがAPP切断を行う一方、Notch切断はほとんど行っていないことが示唆された。次に、HEK293細胞を用いたPSとAph1のダブルノックダウンによって、異なるγセクレターゼの機能の違いを明らかにすることを試みた。しかし、PS1のノックダウンが不十分であったため、それぞれのγセクレターゼの違いを明確に示すことはできなかった。そこで、海外の研究者らによって樹立されたshRNA安定発現HEK293細胞株を用いた解析を行うこととした。これらの細胞株はPS、Aph1がそれぞれほぼ1種類のみ発現しており、個別のγセクレターゼを評価するのに最適であると考えられた。現在、これらの細胞株にγセクレターゼの基質となるNotch受容体をトランスフェクションし、異なるγセクレターゼによるNotch切断に違いがみられるか検討している。さらに、産生されるAβ分子種の違いもELISAキットで調べる予定である。
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