研究概要 |
本年度は高速フォトクロミック分子とキラルネマチックネットワークを用いた新規光エネルギーシステムの構築を実現するため、新規高速フォトクロミックキラルドーパントの開発を重点的に行った。ビアリール架橋型イミダゾール二量体はキラリティを有し、ビアリール骨格の二面角が約90°である発色体と35~45°になる2,2'-異性体、1,2'-異性体を含む。このため、光照射によりビアリール骨格の二面角の制御が可能である。ビアリール骨格の二面角の制御を行うことで大きならせん誘起力の変化が実現できると期待し、新規フォトクロミックキラルドーパントとしてビアリール架橋型イミダゾール二量体に注目した。しかし、ビアリール架橋型イミダゾール二量体のフォトクロミズムについては未解明な部分が多い、そこで、ビアリール架橋型イミダゾール二量体の架橋基の構造や、イミダゾール環の4位、5位のフェニル基に置換基を導入することで、ビアリール架橋型イミダゾール二量体のフォトクロミック特性の制御を検討した。ビナフチル架橋型イミダゾール二量体は有色から無色への逆フォトクロミズムを示し、発色体の色は発色団であるジアザフルバレン構造に由来する。片方のイミダゾール環の4位、5位のフェニル基にメトキシ基を導入することで、これまでの架橋型イミダゾール二量体と同様に生成する発色体の構造制御が可能であることを示した。このことは適切な置換基を導入することで色調の制御が可能であることを示唆する。次にビフェニル架橋型イミダゾール二量体がナノ秒の時間領域で初期状態に戻る超高速なフォトクロミズムをしめすことをオランダのアムステルダム大学との共同研究で明らかにした。また、架橋基の構造を変化させることで、ビアリール架橋型イミダゾール二量体の2,2'-異性体から発色体への熱異性化反応は、ビアリール骨格の二面角が大きいほど早く、発色体から1,2'-異性体への熱異性化は発色体における共役系の長さが短いほど速いことを示した。
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