本研究では,身体運動の機会創出および促進のために次の2つのアプローチから研究を行った. (1)公共空間における協調型運動促進システムの研究 文部科学省は,子どもの運動不足の原因として「スポーツや外遊びに不可欠な要素(時間,空間,仲間)の減少」を挙げている.本研究では,時間,空間,仲間が集まる要素を持っている「公共空間」に着目し,多くの人が集う公共空間(ショッピングモール,展示会など)で実施可能な協調型運動促進システムを設計した.公共空間は,多くの人が集うため,持ち合わせている時間や,年齢,体力が異なる.このような状況の異なる他者同士でも参加しやすい要素を含んだ運動システムを試作・実験し,実際に公共空間で実証実験を実施した.結果として,初対面の人同士が共に運動し,掛け声を掛け合ったり,他人に参加を促す様子などが観察され,公共空間での運動およびコミュニケーションを促進したことが確認された. (2)身体状態に合わせたDesignable Sports Fieldの研究 スポーツは,チームメイトとのコミュニケーションやインタラクションが身体活動へのモチベーションに繋がる.しかし,ルールは固定的であるため経験や体力に差があるプレイヤー間にはレベル差が生じる.こういった場合,スコアやプレイヤー数を調節するといったハンディキャップが適応される場合があるが,適切なハンデの設定は難しい.本研究では,プレイヤーの心拍数を利用して,適切な運動強度でのプレイが可能なスポーツを提案する.本提案スポーツシステムでは,ペアで一方のプレイヤーの心拍数が適切な数値になるようにパートナーがsports fieldをデザインする.実験では,被験者がスポーツを楽しめたことと,レベルが適切であると感じたことが確認された.公共空間での実証実験では4歳の子どもや,車いすに乗ったプレイヤーも参加可能であることが観察された.
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