研究課題/領域番号 |
13J09097
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
浅田 貴志 名古屋大学, 理学部, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 暗黒物質 / 原子核乾板 / 方向性検出 / 飛跡検出器 |
研究概要 |
本研究は、物理学上の重要な課題である暗黒物質の存在について、原子核乾板を用いた検出を行うための研空開発である。本年度は主にテストランにむけた開発や測定を行った。 原子核乾板の原理的感度向上のため、臭化銀結晶をさらに高充填率にし、飛跡長さあたりの結晶数の向上を図った。これにより25nmの結晶サイズ・感度を保持したまま、~1.4倍の結晶数密度の原子核乾板の作成に成功した。 また、結晶自体の感度についても改善を行い、特に超微粒子に対する金硫黄増感を用いた感度向上研究にて従来の1.4倍程度の感度向上を得た。また、Ion Implantation systemによる200keV Carbon飛跡に対する1結晶あたりのEffciencyを測定し、この最大感度を持った乳剤でおよそ30~40%という値を得た。 また、これらの製造安定性調査のため、特に超微粒子における結晶サイズと、ポリビニルアルコール濃度、温度の関係性について研究を行い、超微粒子結晶の安定性を確認した。これらの結果をまとめ、日本写真学会各大会、及びCYGNUS 2013にて報告した。 バックグラウンドスタディとして、中性子の感度測定のため、D-D反応中性子線源を利用した原子核乾板の感度測定実験を開始した。特に高感度型乳剤による線源及びバックグラウンドの測定を行い、実験パラメータの校正を行った。 また、LNGS地下施設にて、実験環境におけるバックグラウンドとなる中性子flux測定の初期試験を行った。 また、これらの検出率測定について、特に400nm以下の極短飛跡では粒子線と結晶の空間的な関係が大きな影響を及ぼす可能性がある。これは基礎評価や実験の最終的な成果に関わるため、モンテカルロシミュレーションを用いた極短飛跡の検出シミュレーションを用いてこれらの影響について研究をすすめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
検出器の基礎的な開発は概ね順調に進んでいる。結晶の感度は最終的な目標には到達していないが、共同研究で感度向上研究が進められており、この応用での解決が期待できる。一方でバックグラウンドやシグナルに対する感度の精密測定が未完了であり、次のステップとなるテストランのために早急な進行を必要とする。
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今後の研究の推進方策 |
感度の精密測定における問題には、純粋に各測定の進度が遅れていることの他に、特に重要な400nm以下の飛跡では結晶サイズや空間充填率といった原子核乾板特有の構造が分解能と検出効率へ影響することがある。測定にはこの厳密な見積もりも必要となるので、構造のシミュレーションについての研究をすすめる。 各測定を完了させ、今年度中を目処にテストランを進めていく。
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