研究課題/領域番号 |
13J09098
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
岡野 千草 宇都宮大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞間情報伝達機構 / クオラムセンシング / N‐アシルホモセリンラクトン / 微生物複合系 / グラム陰性細菌 |
研究実績の概要 |
バクテリアの細胞間情報伝達機構 (Quorum sensing: QS) は、菌体密度依存性の遺伝子発現機構であり、グラム陰性細菌のQS機構では、N-アシルホモセリンラクトン(AHL)がシグナル分子として生産され菌体外に放出される例が知られる。QS機構は増殖に伴う菌体密度増大に由来するシグナル分子の濃度上昇を感知し、シグナル分子濃度が閾値を超えると関連遺伝子の転写が活性化される菌体密度依存性の遺伝子発現機構である。バイオフィルム形成、抗菌物質の生産、細菌感染症を発現する病原性因子の生産など、多様な生物機能がQS機構の支配下にあるため、QS機構を人為的に制御する新システムの構築は多くの産業分野に適用可能であり汎用性が高いと考えられている。グラム陰性細菌では、アシル鎖構造のみが異なる各種AHL分子が菌種に依存せず広く生産、利用されており、本研究ではAHLを介した細胞間シグナリング制御系の構築をターゲットとした。 平成26年度は、前年度に構築した微生物複合系を利用するQS機構活性化システムをさらに高機能化するために、微生物複合系フロックに適用可能なシグナル分子徐放システムの構築を目指した。シグナル分子であるAHLを徐放する担体として、生体適合性と充分な物理強度を持つポリスチレン微粒子・多孔性シリカ微粒子を設計・調製した。ポリスチレン微粒子は、二段階重合により親水性シェル層を有するコア-シェル構造として構築した。粒子表面にはAHLを保持する能力の高いシクロデキストリンを固定化し、高いAHL保持能、期待通りのQS機構の抑制効果を実証した。多孔性シリカ微粒子は、シリコンウエハのエッチングにより調製した多孔性シリカフィルムを表面処理し、さらに微粒子とした。このシリカ微粒子を微生物フロック内部に配置したAHL放出担体として利用する新システムの構築を目指し、シリカ微粒子の表面修飾を試験した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は昨年度に構築したクオラムセンシング(QS)機構を活性化可能な微生物複合系に適用するシグナル分子徐放担体の設計と調製を主目的とした。力学的強度に優れた汎用性のある有機素材、無機素材をシグナル分子徐放担体として選択し、水溶液中でN-アシルホモセリンラクトン(AHL)シグナルと相互作用可能な微粒子をそれぞれ試験した。いずれの徐放担体もAHL保持能を有する。微粒子の表面修飾によりさらなる高機能化も可能であり、微生物複合系フロックに取り込み、フロック内部での保持、分散性に優れた担体に展開可能である。今年度はQS機構を活性化する微生物複合系に適用可能なシグナル分子徐放担体の構築ができたことなどから、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、昨年度調製したシグナル分子徐放担体を、平成25年度に構築した微生物複合系フロックに適用し、微生物複合系の機能化と、クオラムセンシング(QS)機構の人為的制御を試験する。シグナル分子徐放担体からQS機構のシグナル分子としてN-アシルホモセリンラクトン(AHL)の放出を制御し、複合系フロックに存在するQS細菌のAHL濃度依存性遺伝子発現機構を制御する手法を検討する。これに併せて、平成25年度に構築した微生物複合系フロックのAHL保持性能、フロック内外の菌体密度評価など、本系におけるクオラムセンシング活性化の作用機序についても継続して考察を進める。
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