研究課題/領域番号 |
13J09101
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
青木 秀光 立命館大学, 先端総合学術研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 統合失調症 / 親 / 質的調査 / ライフストーリー / 支援 |
研究概要 |
統合失調症の子を抱える親は、生活に密着した苦悩や葛藤を有している。先行研究では親の苦悩を個別具体的に表す調査が不足しているため質的調査によって具体的なニーズを明らかにすることが必要である。第一に、フィールドワークとインタビューによって32年間、統合失調症の子と共に歩んできた母親のライフストーリーを追った。その結果、母親の思い(・子の発症への戸惑い・精神障害への偏見・誤診をした医師への怒り・医師を信じた自己への怒り・育てかたが悪かったからではないかという思い・息子が福祉工場でも働けない状況への戸惑い、等々)や家族会への思い(・最初は、同じ体験をしている人が集まっていたことへの安心感・もっと個別の家族の現状を認めあってほしい・いつまでも共感しているだけの団体ではだめである・決断力あるリーダーがしっかりと会のニーズをまとめて社会へ訴える団体へしたい、等々)そして、将来への不安(・自分たち夫婦がいなくなった後での息子の将来・長男は、何か息子の力になってくれるだろうかという不安、等々)が析出され、家族会を中心とした変革やオーダーメイド化された支援の必要性を提示した。第二に、母親ばかりに焦点化されてしまいがちなケアを父親にうつすことでジェンダー間の差異などを明らかにするために統合失調症の娘を抱える父親へのライフストーリー・インタビューを実施した。そこで明らかとなったのは父親と母親の自責感の差異性(父親は子育て期に関与できなかったことへの悔い・母親は子育て全般への悔い、等々)、子の孤独に寄り添うことを通しての当該父親の必然性(疾患の特性によって孤立しがちな当事者への関与等)、搬送に関わる親子の葛藤の困難性(親は子のために搬送したいが、子は入院という恐怖を親に与えられつつ従わざるを得ない状況等)、復元の医療への淡い期待への複雑性(治るのか/治らないのかという狭間で揺れる思い等)などである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題は、おおむね順調に進展している。統合失調症の子を抱える親への質的調査を実施して、それぞれを研究成果(査読付き論文、学会発表)として社会に発信できている。
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今後の研究の推進方策 |
ライフストーリーという質的調査法をいかに使用するのか。その方法論の精緻化が求められている。よって社会学・人類学・心理学などが蓄積してきた方法を精査して、質的方法論を単なる職人芸ではなく、説明・了解可能性を担保することがこれからの課題の1つであると考える。また、2014年度においては、より積極的に精神障害者家族会に参与して親たちの生を精緻に分析する。
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