研究課題/領域番号 |
13J09108
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
秦 枝里奈 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | オートタキシン / リンパ行性細胞移動 / ライブイメージング |
研究概要 |
私は、リンパ節辺縁洞(subcapsular sinus ; SCS)を構成する支持細胞が免疫細胞のリンパ行性移動を制御する可能性に着目し、細胞移動の新たな制御法の開発を目指した。これまでに、SCSにおいてlysophosphatidic acid産生酵素であるオートタキシン(ATX)が発現していることを確認した。さらに、私が所属する研究室では高内皮細静脈に発現するATXがリンパ球の血行性移動を制御することを明らかにしてきたことから、SCSに発現するATXがリンパ行性の免疫細胞移動を制御するかを検証した。 本年度は、SCSを介した免疫細胞移動とATXの関与について、活性化T細胞の移動に注目した。リンパ節のwhole-mount解析を行った結果、活性化T細胞はリンパ管へ侵入後、これまでA. Braunら(Nat. Immunol. 12 : 879, 2011)が報告していたこととは異なり、medullary sinusからではなくSCSを介してリンパ節実質内へ移動した。 次に、野生型マウスを用いて、生体内ライブイメージングにより活性化T細胞がSCSを介して移動する様子を観察した。野生型マウスの後肢に、活性化T細胞のみを投与すると、SCSを介した細胞移動の可視化が困難であった。そこで、生理的条件下で頻繁に移入している樹状細胞を後肢へ前投与すると、活性化T細胞の移動が頻繁に見られるようになった。フローサイトメトリー解析においても樹状細胞の前投与が活性化T細胞のリンパ節への移動を亢進した。現在、リンパ節指示細胞においてATXを欠損するマウスを用いて同様の解析を行い、ATXの本現象への関与を検討している。以上のことから、樹状細胞はSCSを介した細胞移動を誘導する一つの因子であると考えられるが、ATXの関与についてはさらなる検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
リンパ節支持細胞に発現するATXのみがSCSを介した細胞移動を誘導する可能性を考えていたが、SCSを頻繁に移動する樹状細胞もこれを正に制御する因子である可能性が示された。また、活性化T細胞のリンパ節実質への入口はこれまで言われていたmedulla側ではなく、その反対側のSCSであることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
リンパ節支持細胞由来のATXだけでなく、SCSを移動中の細胞、樹状細胞由来のシグナルについてもあわせて検討を行う。また、最近、Cysterのグループにより、SCSにはCD4-、CD8-, IL-7Rα++のinnate lymphocyteが豊富に存在することが示され(PLos One7 : e38258, 2012)、SCS領域のマクロファージと密接に相互作用を行いながら実質内に移動することが報告されている。この領域にはATXが強く発現していることから、この細胞の移動におけるATXおよびその産物であるLPAの依存性についても検討を進める。
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