研究概要 |
本研究の目的は、視線情報の解読とその心理社会的影響を総合的に理解することである。これまで申請者は、自由発話中の話者の眼球運動の測定と、多変量解析を通じ、眼球運動情報には話者の個人性が表れていることを明らかにした。加えてCGアニメーションによって人間の眼球運動を再現した刺激を使った実験から、人間の観察者が眼球運動情報のみから個人識別が可能なことも明らかになった。しかし、発見された視線パターンに見られる個人性の生起メカニズムはよくわかっていない。そこで25年度はまず, 眼球運動にみられる個人性がパーソナリティを反映しているかを検討するため、BigFive, STAI, BIS/BAS(行動抑制/行動活性)といった尺度を使い実験参加者の性格特性を測定し、眼球運動特性との関係を分析した。25名程度の参加者から, 視線データと性格特性のデータを収集し分析したが, これまでのところ眼球運動特性と性格特性の明確な関係を見いだすことはできていない. しかし, 眼球運動データにみられる個人特性から, 25名の参加者を数学的に判別することが可能であることがわかり, 現象の再現性を確認することができた. また, 異なる視覚環境や, 数ヶ月を挟んで同一の参加者に対し実験を繰り返したことで, 眼球運動にみられる個人性が, 視覚環境や長い時間の経過を経て一貫していることが明らかになった. これらの結果は, 国内外の学会で報告し, また論文としてまとめ科学雑誌に投稿した.
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